捜査対象車にGPS端末 警察が無断で設置、各地で発覚

http://www.asahi.com/national/update/0817/SEB201308170080.html

捜査対象者の車に全地球測位システム(GPS)の端末をこっそり取り付け、どこにいるかをつかむ。そんな捜査手法が、各地で明るみに出ている。警察庁は「必要性が認められる場合は許容される」と主張するが、福岡地裁での公判では、被告の弁護人が「違法捜査だ」と主張。端末の契約者である福岡県警の警視が10月にも証人として出廷する。

本ブログでも、以前、

愛媛県警、GPS情報端末を参考人の車に無断で設置
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060411#1144721932
最高裁、令状なしのGPS追跡は違憲と判断
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20120125#1327458096

とコメントしたことがある問題ですが、私自身の考えとしては、上記のエントリーでコメントしたように、

無断で他人の車に機器まで設置する、ということになると、プライバシーに関する調査の密度が格段に高まり、「無断設置」という点も相俟って、是認されるためには、通常よりは高い捜査の必要性、緊急性を要し、そうでなければ違法、という考え方も十分成り立ちうると思います。
この種の捜査の適法性を判断する際には、必要性、相当性、緊急性、といった要件により判断すべき場合が多いと思いますが、相当性に問題がある以上、ある程度高い必要性や緊急性が認められなければ、違法捜査の疑いは残ると言うべきでしょう。

この米国最高裁判例が、日本における同種捜査の評価に影響するとすれば、プライバシー侵害の程度が高い、相当性に問題がある手法であり、原則として令状によるべきで、無令状によることが許されるのは、高度な必要性、緊急性(例えば、誘拐犯人使用である可能性が高い車両を発見し令状を取得する暇もなく咄嗟にGPS端末を取り付けるなど)がある例外的な場合に限られる、といった方向で考える、ということが、可能性としてはあるのではないかと思います。

ということですね。最近の最高裁の刑事判例で、宅配便の荷物を、宅配業者の協力を得て開披せず無令状でX線検査した警察の措置がプライバシーを侵害し違法と判断されたケースがありますが、この種の捜査が無制約に行われれば、国民の行動がいとも簡単に警察の監視下に置かれプライバシーが暴かれることになりかねませんから、米国最高裁が上記のような判断を示していることも考慮しつつ、捜査の適法性が慎重に吟味されなければならないでしょう。
今後の刑事裁判で、裁判所がどのような判断を示すかが注目されます。