狂気の戦場 ペリリュー〜"忘れられた島"の記録〜

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0813/

ペリリュー島は、太平洋戦争の中でも特異な戦場だった。日本軍はアッツ島以降続けてきた組織的な“玉砕”を初めて禁じ、持久戦を命令。米軍が当初「3日以内で終わる」と予想した戦闘は2カ月半に及んだ。

フィルムと証言から、ひとたび戦争が始まるとそれを終結することがいかに難しいか、戦場とはどんなものなのか、その厳しい現実を伝える。

私が、ペリリューの戦いについて初めて知ったのは、

指揮官 (文春文庫)

指揮官 (文春文庫)

で、ペリリュー島守備隊の中川州男大佐(戦死後、中将に2階級特進)が取り上げられていて、そこで紹介されていたのを読んだことによりました。その後、

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)

大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)

を読んでいると、大本営島嶼防衛の方針を徹底した持久戦へと転換した際に(NHKスペシャルでも紹介されていましたが)、中川大佐が説明会で熱心にメモを取り質問していた、といった記述があって、これが後の奮戦につながったのだなと感じ入ったこともありました。
NHKスペシャルを観て特に感じたのは、あまりにも凄惨な戦場であったことやペリリューの戦いの最中にマッカーサー率いる米軍がレイテ島に進撃し、レイテ進撃を支援しようとするペリリュー攻略の戦略的意味がなくなってしまったことで、特に後者については、中川大佐らの奮戦が一定の効果を生んだ(と言ってもレイテ島の戦いへ与えた影響は皆無ではありましたが)という評価にはなるのではないかと感じました。
戦後、昭和から平成初めにかけての日本の指導者は、自らの戦争体験から、戦争が生むこうした狂気、悲劇を身を以て知り尽くし日本が戦争に巻き込まれることに極めて慎重であったと思います。そうした指導者が世を去り、戦争が招くものが何かが漠然としたイメージのまま日本の進むべき道が安易に語られがちな現状で、戦争になれば何が起きるのか、誤った戦争指導や戦略の誤りによりいかに末端の将兵や民間人が犠牲になるか(指導者ははるか後方で温々と生き延びる中)を、この番組は伝えていたように思いました。
ペリリュー島パラオ諸島の中にあり、パラオは、古賀連合艦隊司令長官らが遭難した「海軍乙事件」ゆかりの地でもあるので、いつかパラオペリリュー島に行って、その後の日本の平和と繁栄を見ることなく戦陣に散り戦果に倒れた人々の慰霊をしたいと、番組を見終わり改めて感じました。