第一審裁判所で犯罪の証明がないとして無罪判決を受けた被告人を控訴裁判所が勾留する場合と刑訴法60条1項にいう「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無の判断(最高裁第三小法廷平成19年12月13日決定)

判例時報1992号152ページ以下に掲載されていましたが、この判例については、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20071215#1197684397

で若干コメントしたことがあります。
判例時報のコメントでは、平成12年の最高裁決定(東電OL殺人事件に関するもの)との関係について、

一審で無罪となった被告人を控訴審が勾留する場合、一審段階と同様の要件の下に許すものとも思われた平成一二年決定の説示に、一定の絞りをかけて要件を加重したようにも見えるが、同決定自体、「記録等の調査により、右無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは」として、一審の無罪判決を踏まえた判断をすべきものとしていたのであるから、本決定は平成一二年決定と何ら抵触せず

としていて、本決定の中にもそのような趣旨の表現がありますが、両決定は、表現が大きく異なっていて、やはり、実質的には、本決定により「平成12年決定の説示に一定の絞りをかけて要件を加重した」ものと見るべきなのではないか、という印象を受けます。
ただ、上記のエントリーでも述べた気休め、アリバイ作りの疑念は払拭できず、今後は、特に弁護士の立場から、本決定を最大限に活用しつつ無罪判決後の再勾留には慎重の上にも慎重に対処する必要があると思います。