被告人が原略式命令確定後に、(a)本邦を出国し非常上告申立時において再入国していない場合(b)死亡している場合における非常上告の可否

ちょっと前になりますが、判例時報2092号161頁以下に掲載されていました。abとも、最高裁第一小法廷平成22年7月22日決定です。
非常上告は、判決確定後、法令違反が判明した場合に、法令の解釈適用を統一、是正するために設けられている非常救済手続ですが(申立権者は検事総長)、その性質上、被告人や弁護人の関与は想定されず、それらの者の関与に関する刑訴法の規定もありません。上記のabのような場合について、最高裁が、

(a)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100723113651.pdf

なお,被告人は,原略式命令確定後に本邦を出国し非常上告申立て時において再入国していないことが認められるが,非常上告制度の目的等に照らすと,このような場合においても,検事総長最高裁判所に非常上告をすることができる。

(b)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100723113724.pdf

なお,被告人は,原略式命令確定後の平成20年8月7日に死亡していることが認められるが,非常上告制度の目的等に照らすと,このような場合においても,検事総長最高裁判所に非常上告をすることができる。

という判断を示したことは、上記のような非常上告の制度趣旨や、被告人に不利益を及ぼすようなことでもないことから、妥当なものと評価できるでしょう。