保釈された者につき、刑訴法96条3項所定の事由が認められる場合、刑事施設に収容され刑の執行が開始された後に保釈保証金を没取することができるか(積極、最高裁第一小法廷平成21年12月9日決定、判例時報2094号146頁)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091211104044.pdf

刑訴法96条3項は,保釈された者について,禁錮以上の実刑判決が確定した後,逃亡等の所定の事由が生じた場合には,検察官の請求により,保証金の全部又は一部を没取しなければならない旨規定しているが,この規定は,保釈保証金没取の制裁の予告の下,これによって逃亡等を防止するとともに,保釈された者が逃亡等をした場合には,上記制裁を科することにより,刑の確実な執行を担保する趣旨のものである。このような制度の趣旨にかんがみると,保釈された者について,同項所定の事由が認められる場合には,刑事施設に収容され刑の執行が開始された後であっても,保釈保証金を没取することができると解するのが相当である。

このような場合(刑事施設に収容され刑の執行が開始された後の保釈保証金没取の可否)について、従来、高裁レベルでは没取否定説と肯定説があったとのことですが、刑訴法96条3項は、

保釈された者が、刑の言渡を受けその判決が確定した後、執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない。

と規定するだけで、どちらの考え方も許容する余地があって、最高裁が上記のように肯定説に立つことを明らかにした意義は大きいでしょう。