広田弘毅の笑顔とともにー私が生きた昭和

広田弘毅の笑顔とともにー私が生きた昭和

広田弘毅の笑顔とともにー私が生きた昭和

著者は、元東京高裁長官で、退官後、沖縄に移住し、弁護士登録をせずユニークな活動をしていることで知られていますが、御父君(キャリア裁判官)が広田元首相の秘書官を務めていたことから、広田元首相と直接接する機会があったとのことで、広田元首相の人となりが、本書の中で繰り返し紹介されていて、興味深いものがありました。その潔い身の処し方は、正に、

落日燃ゆ (新潮文庫)

落日燃ゆ (新潮文庫)

に描かれている通りであり、今なお著者が広田元首相を尊敬するのも、よくわかる気がしました。
私自身、「落日燃ゆ」で広田元首相を知り、東京裁判で刑死した唯一の文官、悲劇の宰相というイメージを長く持っていました。しかし、その後、

広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書)

広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書)

を読み、

広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080712#1215852380
広田弘毅に対する評価
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080831#1220179205

でコメントしたように、厳しい見方にも接するようになって、なかなか評価の難しい人物という印象を持っています。
ただ、上記の「私か生きた昭和」を読むと、時代の中で翻弄され無力のまま推移し日本国や日本国民に甚大な惨禍をもたらした責任というものを、広田元首相自身が痛切に感じていたことは間違いなく、従容として刑死した、その姿勢や気持ちは、率直に評価する必要があるのではないかということを改めて感じました。