広田弘毅に対する評価

先日来、少しずつ読んでいて、最近、読み終えた

広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書)

広田弘毅―「悲劇の宰相」の実像 (中公新書)

ですが、最後の部分で、

悲劇の宰相とみなされがちな広田だが、破局へと向かう時代に決然とした態度に出なかった。広田が悲劇に襲われたというよりも、危機的な状況下ですら執念を見せず消極的となっていた広田に外相や首相を歴任させたことが、日本の悲劇につながったといわねばなるまい。
あの戦争の責任を広田にだけ負わせるのはもちろん公平ではないし、極刑は過酷だったと思うが、少なくとも責任の一端は広田にあったと考えざるをえない。広田としても責任を痛感していただけに、あえて証人台には立たなかったのであろう。
(271、272ページ)

とあるのは、やや厳しくはあるものの、広田弘毅に対する非常に的確な評価であり、東京裁判における広田弘毅の身の処し方に対する正しい理解でもあるのではないか、と強く感じました。
ただ、私自身は、やはり、広田弘毅の生涯は、時代の大きな流れに抗し切れず、志に反する結果になってしまったという意味で、悲劇的なものであり、そういった点を捉えた

落日燃ゆ (新潮文庫)

落日燃ゆ (新潮文庫)

は、史実そのものではないものの、作品としては優れているのではないか、と改めて感じました。