Google Newsが起因 - UAL株価急落事件にみる、ネット情報と効率化の功罪

http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/09/12/ual/
http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/09/12/ual/001.html
http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/09/12/ual/002.html

物事が連鎖的に起きているので、ややわかりにくい面がありますが、要するに、グーグルニュースが、古いニュースをさも新しいニュースのように拾ってきて掲載してしまったため、それを真に受けた動きが次々と広がって、UAL株が急落した、というものです。

今回のUALの件でわかったのは、各段階で積み重なったエラーが最終的に大事件につながったということだ。もし各々の箇所でチェック体制が1つでも働いていれば、事件にはならなかった可能性がある。
まず最初のエラーはChicago Tribuneの記事を掲載したSun Sentinel。Tribuneの主張のように記事の内容やURLにもいっさいの変更はなく、Googleのクローリングで勝手にニュースを拾われて配信されたことで一番の加害者に仕立て上げられてしまった点で、ある意味被害者だともいえる。だが前述のWSJの指摘のように配信記事に日付がなく、記事を確認しに来たGoogle News以降の読者を混乱させた点は問題だ。
次のエラーはGoogle。今回の件に限らずニュース配信側とたびたび衝突することが多いGoogle Newsだが、UALのケースにみられるようにGoogleを経由して獲得できるトラフィックが多いこともあり、ある意味黙認状態で、両者には微妙な距離感の共存関係が存在する。そのため、ひとたび問題が発生すれば真っ先にやり玉に挙がるサービスでもある。今回の問題はGoogleアルゴリズムの改良を促すとともに、ユーザーがGoogle Newsを過信してはいけないという教訓を与えたといえる。知っておくべきは、分類アルゴリズムに未成熟な部分があるということ、そして記事リンクのタイムスタンプが「クローラがページを収集した時間」になっているということの2つ。ニュースを吟味するにあたってはリンク先のソースをきちんと確認し、その情報の扱いは自己責任という原点に回帰すべきかもしれない。
そして2次情報の配信を行ったBloomberg。これは市場調査会社の米Income Securities Advisorsがマーケットウォッチ情報としてUALの当該記事を紹介した投稿が、Bloombergによって広く配信されたもの。前述のようにBloombergの情報は金融街をはじめとする世界中のトレーダーや投資家が利用しており、これがさらに被害を拡大させる結果となった。Google Newsから伝搬した情報を広めたのがBloombergとなるが、2次情報の内容を吟味せず広めたという点で大きな問題だ。だが関係者らのコメントによれば、プログラム取引などの発達によってトレーダーが秒単位で判断を行うなか、情報提供者は1分1秒を争って情報を探して配信しているような状況だという。そのため、本来働くべきセーフガードが働かず、噂レベルに近い誤情報まで配信してしまう危険性があった。

問題点の指摘がわかりやすく、やや長めに引用させてもらいましたが、ネット社会の恐ろしさというものは、匿名の誹謗中傷等の問題以上に、こういったところにあるのではないか、という気がします。非常に便利であり、人々がネットに依存するとともに、ネットの内部でも様々な仕組が相互に依存し合っている、そのバランスが、ある時、何かのはずみで崩れてしまうと、間違いが間違いを呼び、影響が次第に大きく広がってしまい、洒落や冗談ではなく第三次世界大戦とか世界全面核戦争といったことすら起きかねないでしょう。
上記の記事では、「今回の問題はGoogleアルゴリズムの改良を促すとともに、ユーザーがGoogle Newsを過信してはいけないという教訓を与えたといえる。」とあって、これはまったくその通りですが、では、「信用」と「過信」をどこで線引すべきか、ということになると、いちいち疑っていてはきりがないだけに難しく、言葉で言うほど簡単なことではありません。現実的には、驚くべきニュースがあるニュースサイトで掲載された時には、別のニュースサイトでも確認してみるなど、自分なりに、状況に応じてクロスチェックする習慣というものは、やはり持っておいたほうが無難ということは言えそうです。
様々な教訓を提供した事件であったことは間違いないでしょう。