預金通帳等を第三者に譲渡する意図を秘して自己名義預金口座の開設等を申し込み預金通帳等の交付を受ける行為と詐欺罪の成否(積極)

最高裁平成19年7月17日第三小法廷決定ですが、判例時報1985号176ページに掲載されていました。このような態様の行為が、1項詐欺罪に該当すること自体は特に問題ないと以前から思っていましたが、判例時報のコメントでも指摘されているように、最近、いわゆる本人確認法(金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律)で、取引にあたって本人確認事項を偽ったり、正当な理由がない預金通帳等の譲渡等が処罰されるようになっていて、最高裁決定で問題になったような行為について、一種の「住み分け」という見地から詐欺罪としては不成立とすべきであるという有力説が存在する、という状況があります。
この点について、この最高裁決定が、住み分け論は採らず、本人確認法の改正後の行為を含め、詐欺罪の成立を明確に認めた、ということで、実務的にもきちんと押さえておくべき判例という印象を受けました。