「検察官不在で判決!女性裁判官が被告を呼び戻しやり直し」

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060825#1156503311

でコメントした事件ですが、その後、最高裁で判断が示され、決定(平成19年6月19日・第二小法廷)が、判例時報1977号159頁に掲載されていました。
上記のコメントで、私は、

判決宣告が一応存在した、と考えるか、検察官が立ち会っていない判決宣告は、判決宣告とは言えず当然無効と考えるか、2つの考え方があり得るでしょう。福井地裁は、後者と考えて(あるいは、パニック状態の中で何も考えないで)、判決をやり直したようですが、前者と考えて、手続に重大な瑕疵がある、という見方も可能でしょう。そうすると、地裁レベルでは是正不可能(やり直しできない)で、控訴審で是正するしかない、ということになります。

と述べましたが、高裁、最高裁は、前者と考えた上で重大な瑕疵がある、と判断しています。ただ、高裁が、判決に影響は及ぼさない、としたのに対し(控訴棄却)、最高裁は、判決に影響を及ぼすが、破棄しなければ著しく正義に反するとは言えない(「不著反正義」と言われます)として、破棄まではしていません。

刑事訴訟法第411条
上告裁判所は、第405条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
1.判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
2.刑の量定が甚しく不当であること。
3.判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
4.再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
5.判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。

こういった事態は稀にしか起きないことですが(頻繁に起きても困りますが)、刑事判決の有効性を考える上で、一つの参考になる判例にはなるでしょう。