日本刑法学会第92回大会(於同志社大学今出川キャンパス・室町キャンパス)

http://www.clsj.jp/sir/92/92notice.pdf

先週の5月17日、18日に開催され、私も参加してきました。特に強く興味を感じたのは、1日目の分科会中の「裁判員裁判控訴審の在り方」、2日目のワークショップ中の「監視捜査とその法的規律」でした。
裁判員裁判控訴審の在り方」は、最近、本ブログでも

裁判員の判断尊重を」犯罪被害者の会が決議
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20140127#1390834109
女子学生殺害 死刑判決破棄で上告
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20131022#1382407535
千葉大生殺害:裁判員裁判の死刑破棄 東京高裁は無期判決
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20131010#1381368743
<青山強盗殺人>死刑破棄し無期 裁判員裁判で初 東京高裁
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20130620#1371710017

とコメントしたような、裁判員裁判の1審で死刑判決が宣告され控訴審で量刑不当を理由に破棄されるケースが複数出ている状況もあり、国民の司法参加を目的として導入された裁判員制度の趣旨、目的との関係で、裁判員が裁判官とも協議の上で下した判断を、尊重しつつも破棄する、その正当性や根拠が問われているという私自身の強い問題意識もあって、展開される意見や議論を興味深く聞き、いろいろと得るものがありました。そして、控訴審で破棄された事件の中には検察官が上告したものもあり、最高裁がいかなる判断を示すかが大いに注目されると改めて感じました。
「監視捜査とその法的規律」では、従来、監視カメラなどの「監視捜査」で、情報の取得及びその後の保存、利用等のプロセス中、最初の「取得」に問題の捉え方が偏っていたのではないか(取得時中心主義)という問題意識に基づいた議論が行われていて、これは、私自身の問題意識にも重なるものがあり、ここでも大いに刺激、示唆を受けるものがありました。取調べの可視化が進むことで、従来のような長時間、綿密な取調べで詳細な供述を得て、といったことが困難になれば、極力、様々な客観証拠から立証を尽くすという手法に大きく転換せざるを得ず、そのためには、捜査機関が日頃から収集した、あるいは入手できる様々な、膨大な情報(最近、話題の「ビッグデータ」的なものも含め)を利用する手法を避けては通れないでしょう。それを、プライバシーとの関係で、取得時点からひたすら厳しく制限するということになれば、では、何で立証するのか、ということになりかねません。人権も重要ですが、犯罪の抑止や摘発も公益性の高い事柄であり、適切なバランスを図る上で、従来の、監視型捜査で情報取得を厳しく封じて終わりにするような議論は見直されなければならず、取得だけでなくその後の保存、利用という一連のプロセス全体が、プライバシー保護と両立するような、そういった監視型捜査を実効性を伴いつつ「監視」する新たな法制度など、検討、実現されるべきことは少なくないという思いを改めて持ちました。
こうした、日頃は流してしか考えずに終わりがちな点について、ちょっとでも立ち止まって考える機会が得られるので、こうした学会に出ることは有意義なものと感じます。