殺人未遂等被告事件において、被告人と犯行とを結びつける唯一の証拠である共犯者の証言の証拠価値に疑問があるとして、控訴審判決が破棄され、控訴審裁判所に事件が差し戻された事例(最高裁第二小法廷平成21年9月25日判決)

判例時報2061号153頁以下に掲載されていたので、ちょっと読んでみました。古田裁判官(検察官出身)が反対し、他の3名の裁判官の多数意見により原判決が破棄差し戻しになっていて、多数意見の1名が反対にまわれば、2対2になっていたところでした。
共犯者供述が、控訴審段階になって、それまで関与を供述していなかった者も関与していたと変遷し、変遷後の供述に基づいて起訴されたという流れになっていますが、供述変遷の経緯の不自然性や、変遷後の供述が他の証拠関係と重要な点で矛盾していることなどが、判決文や補足意見で指摘されていて、古田裁判官の反対意見も含め、刑事の事実認定の手法を学ぶ上で、かなり有益で参考になる事例という印象を強く受けるものがあります。法科大学院で、有罪という判断をした地裁、高裁判決との比較もしながら検討すると、事実認定についてかなり多くのことを学べそうです。
こういった重大な疑問がある事件について、最高裁が乗り出して検討してくれれば良いものの、問題がありながら上告棄却となって闇に葬られてしまっている事件も数多いのではないかと思われ、その点も、改めて強く憂慮されるものがあります。