自白調書、不提出も 裁判員対策で最高検試案

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007081501000945.html

市民が刑事裁判の審理に加わる裁判員制度に備え、最高検は15日までに、捜査・公判対策の「試案新版」を作り、「任意性、信用性に問題がある自白調書は、疑問を抱かれたときのダメージが極めて大きく、証拠提出しないという選択もあり得る」との方針を打ち出した。
自白調書は、任意性などを否定されて無罪判決につながるケースもあるが、これまでは「ほかに取って代わる明確な証拠があれば別だが、よほど信用性に問題がある場合を除けば自白調書を証拠請求してきた」(検察幹部)とされてきた。提出自体の回避は従来方針の転換となる可能性もあり、捜査や公判の実務に影響を与えそうだ。

昔、検察庁に入って日が浅く、まだ若くて試行錯誤で公判立会をしていた頃に、自白以外の証拠で十分立証でき、自白が非常に表面的で底が浅いものでしかなかったため、自白は提出しないで立証することを考えている、ということを担当裁判官に話したところ、「そういった立証をするなら、事件自体に疑問を持つ。」とかなり強く言われて、そういった立証をしなかったことがありました。
自白には常に任意性、信用性がある、というのが、捜査機関における、動かしてはならない大前提(一種の虚構という側面がありますが)であり、それを自ら崩すことは、立証そのものに大きく影響し、裁判員の心理にも無罪方向で大きく作用する可能性を秘めているような気がします。
自白の取り方に大きく影響する面もあって、今後、この点に関する議論は広がるのではないかと思います。

追記:

古い話なので、記憶がやや曖昧ですが、上記の事件は、別の検事から公判を引き継いだ事件で、既に自白調書も請求されていて、被告人、弁護人から任意性を争う主張がされていた、ということであったと思います。弁護士の立場からは、あまり好ましいことではありませんが、検事として時々裁判官と面談して(弁護人はいないところで)、今後の立証予定などを話す中で、上記のような話が出た、という記憶です。