ユーチューブ、違法投稿動画の識別システム導入へ

http://www.asahi.com/business/update/0802/TKY200708020328.html

グーグルによると、このシステムは「フィンガープリント(電子指紋)」と呼ばれる認証技術をもとにするもので、動画や音楽データを事前に登録。投稿された動画をそのデータと照合、違法なら著作権者側が削除を要請できるようにする。
データ登録では、著作権者の協力が必要で労力もかかることになりそうだが、グーグルはその労力を軽くする技術を検討しているという。

私の場合、知識、経験が刑事中心になっている面があるので、どうしても刑事的な観点で物を見がちですが、ユーチューブや同種の動画サイト運営者、その関係者と、京都地裁で有罪になり控訴中のウイニー開発者が、どうしても重なって見えてしまいます。
上記の1審判決の後に、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20061217#1166287607

とコメントし、その中で、判決の認定について、

「十分認識しながらこれを認容」と認定していますが、これだけでは、通常の故意と変わりません。「既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルが生まれることを期待しつつ」というところに、そういった通常の故意レベルを超えた、一種の「意欲」のようなものを認定しているようにも読めますが、上記の通り、「著作物の違法コピーをインターネット上に蔓延させようとする積極的な意図」は明確に否定していますから、どういうレベルでの主観的態様があるから有罪である、という、一般化できる基準のようなものをそこに見出すことは極めて困難と言うしかありません。「公然と行えることでもないとの意識」とある点は、違法性の意識を問題としているようにも見えますが、違法性の意識を現実に有していること自体は犯罪の成否とは無関係である、とするのが一貫した判例の立場であり、公然と行えることでもないとの意識というものが、この種行為を有罪とする上で重要、とも考えにくく、この部分の趣旨は何ともよくわかりません。

と述べたことがありますが、このような曖昧模糊とした有罪認定がなされる現状下においては、上記ような技術が導入されても、グーグルやユーチューブ関係者が日本で刑事事件として起訴されるようなことがあれば、

本来、サービス提供により利益を受ける運営者自身の責任と負担において権利侵害を防止すべきであるにもかかわらず、自己の責任を棚に上げ権利者の協力を強いる形での、いわば見せかけ、おざなりの権利侵害防止措置しか講じておらず、権利侵害を十分認識しながらこれを認容し犯行に及んだことは優に認められる。

などと幇助責任(もしかしたら正犯責任)を問われてしまう恐れは十分ある、と言えるでしょう。
実際に起訴される、されない、はともかく、そういった、かなり危うい状況の中でサービスを提供している、という認識は、頭の片隅で持っておくべきでしょう。>動画サイト運営者、関係者