<ウィニー>利用者急増、1年で3倍 ウイルス遭遇は44%

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080105-00000086-mai-soci

現在利用者は、ウィニーの被害が社会問題化した一昨年6月の調査で3.5%だったのが、9.6%に急増していた。ACCSは「明確な増加原因は不明」とするが、「著作権侵害行為も激増していることが推定される」という。
主に利用しているファイル交換ソフトは、ウィニーが27.0%で1位。2位が「LimeWire(ライムワイヤー)」(18.8%)となっている。

私は実務家ですから、刑事事件が立件される場合に、一罰百戒、ということが狙いとなる場合があるということは知っていて、それを否定する気もありません。要は、そういった手法に頼る合理性、一罰百戒「効果」が得られ国民に広く納得が得られるか、ということではないか、と思います。
そういった観点で、上記のような現状も踏まえた場合、ウィニー関係者が立件され有罪になったこと、特に、ウィニー開発者が有罪になったことは、何ら一罰百戒効果を挙げてはいない、ということになるでしょう。それだけではなく、今後の高裁、最高裁の判断が待たれるとは言え、地裁での判決では、この種の開発者に幇助責任が問われる場合の明確な基準が示されることもなく、悪用されるようなものを作り出し実際に犯罪として悪用された場合、作り出した者は悪用された犯罪の幇助犯として処罰される危険を常に負う、という、とんでもない現状だけが残ってしまいました。しかも、ウィニーについては、開発者まで立件してしまったことで、ソフトとしての改良の道を捜査当局が自ら葬り去ってしまっていて、結局、あの立件、起訴、有罪が何をもたらしたのか、ということになると、何ももたらさず、かえって事態をさらに悪化させただけでしょう。精緻な理論を駆使して(というほどの理論は駆使されてはいませんが)、この種の開発者に刑事責任がある、ということが理屈(屁理屈を含め)で説明でき、警察庁長官検事総長に誉められたとしても、刑事政策的には完全な失敗事例であった言っても過言ではない、と思います。
こういった流れの中で、現在のダウンロード違法化へ、ということもある、と私は自分なりに位置付け、理解していますが、イタチごっこ、というものは、それ自体、状況に応じて必要なものではあるものの、方向性を見誤ったイタチごっこというものを繰り返していると、イタチを追いかけているだけで肝心の目的は何ら達成されない、ということになりかねません。
なぜウィニーなどの利用が増えてしまうのか、主流としての利用態様が、適正な課金が行われつつ適法に、かつ、ウイルス等の脅威にもさらされず安全にコンテンツを入手して楽しむ、という方向へ事態を持って行くよう流れを大きく変えるにはどうすべきか、ということを、より真剣に考え効果的な対策を講じる必要性を感じるのは、おそらく私だけではないでしょう。