<名誉棄損>無罪判決後に匿名ブログ 発信者の開示求め提訴

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091122-00000004-mai-soci

男性医師は06年、診察を装って女性患者を写真撮影したなどとして準強制わいせつ罪3件に問われた。2件有罪、1件無罪とした福岡地裁判決に対し、2審・福岡高裁は今年5月、3件とも無罪とし、確定した。
訴状によると、問題のブログは、自称「調査会社の社員」が匿名で開設。刑事事件など自分の関心事を書き込んでいるが、2審判決当日、男性医師の実名を挙げて「わいせつ診療で逮捕〜逆転無罪」とする見出しを掲載。「医療行為と称して患者の体を触り、写真も撮った」などと、逮捕容疑や起訴状に基づき新聞などで報道された内容を書き込んだ。
医師側はこうした内容が無罪判決後にブログに掲載された点を問題視。「社会的評価を著しく低下させる」とし、8月、プロバイダー「ケイ・オプティコム」(大阪市)に発信者開示を求めたが拒否されたため、10月、提訴に踏み切った。
同社側によると、発信者は「社会的に知れ渡った情報を書き込んだ。無罪というニュースも追加しており、権利侵害はなく、名誉棄損に当たらない」と説明しており、同社側は「権利の侵害が明白ではない」と請求棄却を求めている。問題の書き込みは、発信者が「医師の気持ちを考える」として既に削除したという。

このブログの記事を読んでいないので、可能性としてのコメントになりますが、無罪という事実を客観的に伝えるものであったとすれば、被告人の社会的評価を低下させるものとは言えず権利侵害を認定するのは困難でしょう。しかし、無罪という事実を伝えつつも、有罪視したり、嫌疑が残るといったことを伝えるような、少なくとも一般人にそのような印象を与えるような内容のものになっていれば、社会的評価は低下させるものという認定を受けるように思います。
その場合、問題は、違法性阻却事由があるかどうかということになりますが(発信者情報開示請求訴訟では、その可能性すらない、権利侵害が明白というところまで請求者が立証する必要があります)、無罪判決が確定しているという状況の中で、単に報道に基づき、他の根拠を伴わずに、上記のような社会的評価を低下させるような表現行為を行えば、真実性の点で、違法性が阻却されないと判断される可能性が高いように思います。ただ、それが、発信者情報開示請求訴訟の訴訟構造の中で、「権利侵害が明白」とまで判断されるかどうかには、やや微妙さも感じます。
この種の問題が生じることはありがちなだけに、訴訟の今後が注目されるという印象を受けます。