ファイル共有…サーバー管理者を初摘発 「うたたね」利用で仙台の男 徳島県警

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121210/crm12121014190011-n1.htm

逮捕容疑は「うたたね」のサーバーを管理運営し、4月中旬〜5月下旬、不特定多数の利用者が音楽や映画の海賊版データを交換できる状態にし、5月25日、神戸市の無職女=同法違反で有罪判決=が海賊版映画のデータを送信できる状態にして著作権侵害を手助けしたとしている。

この種のファイル共有には、サーバーでファイルを管理するタイプと、そういったサーバーによる管理を伴わないP2Pのタイプに大別されますが(Winnyは後者のタイプ)、上記の記事で問題になっているのは、サーバー管理型のようですね。
考え方としては、Winnyの場合のソフト開発者と同様な立場(本件ではサーバーの管理ですが、手段の提供、という点では本質的に変わらないでしょう)と見てよいと思います。
Winny開発者が著作権違反幇助に問われた事件で、最高裁が示した判断は、

ウィニー開発者、無罪確定へ 最高裁著作権侵害、容認せず」
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20111221#1324429431

でコメントしたように、

1 高裁判決の論理については、従来の幇助犯理論に照らし、刑法62条(幇助犯に関する規定)の解釈を誤ったものとしつつ
2 Winnnyのような適法にも違法にも利用できる価値中立的なソフトを公開、提供するにあたっては、著作権侵害の一般的可能性があり、それを認識、認容しつつ行い、著作権侵害利用が行われただけでは幇助犯は成立せず、具体的な侵害利用状況が存在し、それを提供者が認識、認容する必要があるとして、そのような場合として、
a ソフト提供者がそのソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識、認容しながら公開、提供を行い実際に著作権侵害が行われた場合
b そのソフトの性質、客観的利用状況、提供方法などに照らしソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者がソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められ提供者もそれを認識、認容しながら公開、提供を行い実際に著作権侵害が行われた場合に限り幇助犯が成立するとして
3 本件については、aには該当せず、bについては客観的に見て例外的とはいえない範囲の者がソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高い状況下での公開、提供行為であったことは否定できないものの、被告人の主観面において、Winny著作権侵害のために利用する者が例外的とはいえない範囲の者にまで広がっており公開、提供した場合に例外的とはいえない範囲の者が著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたとまで認められない(故意がない)

といったものでした。
これを本件にあてはめた場合、有罪かどうかを分ける決め手は、おそらく、上記で赤字にした「具体的な侵害利用状況が存在し、それを提供者が認識、認容」していたか、ということで、上記のa、bに即して言うと、サーバー管理者が、サーバーを利用する者のうち例外的とは言えない範囲の者が著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められ管理者もそれを認識、認容しながら管理を行っていたか、ということも問題になるでしょう。
実態がどのようなものであったかがわからないので、これ以上は何とも言えませんが、ただ、ソフト提供にとどまる場合に比べ、サーバーを管理していると、交換されているファイルの内容やそれらがどの程度著作権侵害の実態を持っているかという事情に接しやすく(著作権者からの抗議、苦情が寄せられたりしていればなおさらでしょう)、著作権侵害の程度が高い実態があれば、そういった事情を把握しやすい立場にはある、ということは言えるのではないかと思います。徳島県警が、敢えて強制捜査に踏み込んだ背景には、そういった事情があるのかもしれません。
その意味では、Winny最高裁判決の後でも、こういったサーバー管理型のファイル共有には、刑事責任を問われやすいリスクがある、という側面があり、安易に手を出すべきではないでしょう。