松本死刑囚の弁護士、東京高裁が37年ぶり懲戒請求へ

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070215it16.htm?from=top

以前、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060923#1158974390

で、

そもそも、本件では、控訴趣意書不提出を理由に控訴棄却決定が出て、最高裁でも特別抗告が棄却されて確定しており、仮に「迅速な進行を妨げた」行為があったと仮定しても、既に、訴訟自体は終了しており、処置請求に「特に必要がある」とまでは認められない、という見方も十分可能でしょう。

と述べたことがありますが、日弁連は、似たような考え方に立ったのかもしれませんね。
また、上記の記事では、

この決定について、東京高裁の山名学事務局長は、「日弁連は、形式的な理由で両弁護人の弁護活動の当否についての判断を回避した。弁護士倫理の強化が求められているのに、今回の判断は、こうした要請を無視するもので、極めて遺憾だ」と厳しく批判。「両弁護人の行動が許されないものであることを明確にする」として、弁護士会の自主的な判断を促す「処置請求」ではなく、直接、所属弁護士会に懲戒処分を求める「懲戒請求」に踏み切る方針を明らかにした。

とあり、今後、裁判所が懲戒請求を行うようですが、控訴趣意書の期限内提出が行われなければ、裁判所は控訴棄却にすればそれで訴訟は終わるだけのことである上、弁護人は、被告人のために良かれと考えて、あえてこういった行動に出ているわけであり、必ずしも、弁護士倫理に反する、許されない、懲戒相当だ、とは言いにくい面もあると思います。
私自身は、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060915#1158325440

でも述べたように、この件に関する弁護人の訴訟活動には批判的な意見を持っていますが、処置請求、懲戒と騒ぐ裁判所の見識や、自らの不手際(醜態と言っても過言ではないでしょう)を棚に上げ弁護士だけ悪者にしている点には、疑問を感じます。
こういう裁判所が、裁判員が関与した裁判の控訴審を担当する、ということは、国民の皆さんも覚えておいたほうがよいでしょう。

追記:

東京高裁、弁護士の懲戒請求へ オウム控訴審
http://www.asahi.com/national/update/0216/TKY200702150393.html

では、

15日の日弁連決定は、処置請求の性質を検討。「審理の進行確保の実効性を担保するために、裁判所が『特に必要があると認めるとき』に行使される制度。現に進行中の事件の審理とは切り離せない」と述べ、「審理が終結した後には、処置を請求することはできない」という解釈を示した。

とあり、上記の私の見方と同様の判断だったようです。
私が東京高裁の裁判官であれば、控訴趣意書が期限以内に提出されなかった時点で、速やかに控訴棄却決定を出していますから、裁判の遅延もなく、こういったドタバタも生じることなく裁判は終了しています。裁判制度に対する信頼が揺らぐ、などということも、そもそもあり得なかったでしょう。要するに、裁判所が当たり前のことを当たり前に行っていれば、こういったドタバタは生じる余地すらなかった、ということだと思います。