多数事件の被告、事件別に裁判員選任…審理負担を軽減

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061120it14.htm

要綱では、事件の解明に支障がない場合、複数の事件を分離して別の裁判員が審理するようにし、個々の裁判員の拘束期間を短縮する。一方、裁判員とともに審理を行う裁判官は、すべての事件を担当する。
例えば、〈1〉殺人〈2〉強盗傷害〈3〉放火――の三つの事件で起訴された被告で、初公判前に裁判が長期化することが判明した場合、裁判官が審理の分離を決定。事件ごとに裁判員を選任し、順番に審理していく。
先行する〈1〉と〈2〉の事件の審理ではそれぞれ、被告が犯罪行為をしたのかどうかという事実認定を行った上、有罪か無罪かだけを判断する「部分判決」を言い渡す。その後に行う〈3〉の事件の審理では、まず、この事件について有罪か無罪かを決めた後、〈1〉と〈2〉の事件の部分判決と合わせ、三つの事件を通じた被告の刑の重さ(量刑)を総合的に判断する。

そんなに器用に事が運べるのか、というのが、私の率直な印象ですね。例えば、上記の例で言うと、(3)の事件の裁判員は、量刑を決めるにあたり、実際に見たり聞いたりしていない証拠に、記録上だけで接することになりますが、事件を分離するほどですから、量も多く、内容もそれなりに複雑である場合も多いと思われ、かなり難航するケースが多くなることが予想されます。
また、刑事事件の証拠というものは、事件単位できれいに整理できないことも少なくなく、一人の証人の証言がが複数の事件にまたがっている、などといったことは、ざらにあります。
分離して進めている間に、何が何だかわからなくなり、裁判自体が空中分解状態になってしまう、というケースも、少なからず出てくる可能性があるでしょう。「精密司法」と「裁判員制度」が合体した時に生み出されるものは何か、という、本質的な問題を避けて通ってきたツケを、遂に払わされるときが来た、ということだと思います。