沼津の女性殺害 判断に心揺れ 裁判員『遺族の声に胸痛くなった』

http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20100205/CK2010020502000165.html

男性裁判員の1人は会見後、「極刑でなければ遺族は不満を感じる。死刑を選べば僕たちが絞首台に送り込むことになる。どんな判決でも後味が悪いと感じた」と話した。

落合洋司弁護士(元静岡地検検事)の話 判決の中で市民感覚がうかがえるのは、被害者参加制度を利用して遺族が求めた死刑に言及した点。裁判官のみの裁判では検察側の求刑の範囲内で審理する色彩が強かったが、市民目線で遺族に配慮し、死刑も検討したという経過が判決に表れたのではないか。量刑に違和感はなく、被告に有利な事情も不利な事情もバランス良く触れている。裁判員は冷静に判断したと思う。

「元静岡地検検事」として私がマスコミに登場するのは、おそらく初めてですね。静岡地検沼津支部では、その地域としては大きめの経済事件で本庁から長期間出張して取調べ等を行っていたこともあって、懐かしさを感じます。しかし、この事件は、重く、辛いものがあって、裁判員も大変だったのではないかと思います。
同種の性犯罪前科があること(うち1犯は累犯前科)、何ら落ち度のない一人歩きの女性を襲い、強制わいせつ行為に及んだ後、非情にも頸部に切りつけ失血死させて殺害するという重大な結果を招いていることなどから見ると、死刑は重きに失するように思いますが、無期懲役という求刑、量刑は、従来の量刑事情に照らしても十分あり得るものでしょう。上記の記事でもコメントしたように、判決では、被告人に有利、不利な事情がバランス良く検討されていて、裁判官と裁判員が、この重く辛い事件をよく裁き切ったという印象を受けるものがありました。もちろん、被告人、弁護人にとっては不本意とは思いますが、結婚後1年程度の、まだ25歳であった被害者が、幸せな生活の中、夫とともに実家に帰省中、犬の散歩をしていたところこの事件に遭遇し無念の死を遂げたということを、被告人には厳粛に受け止めてほしいという気がしてなりません。