「家庭裁判所に起訴された児童福祉法違反(児童淫行罪) の訴因と地方裁判所に起訴された児童買春等処罰法違反(児童ポルノ製造罪)の訴因とが実体的にいわゆるかすがい現象同様の関係にある場合の(以下、略)」

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20060405/1144203602

この裁判例判例時報で読みました。
専門的な話になりますが、「かすがい現象」というのは、B、Cという、本来、別個の犯罪がある場合に、AとB、AとCという犯罪が、科刑上一罪の関係に立つことによって、Aという犯罪が、一種の「かすがい」になり、BとCが科刑上一罪になる、という現象を言います。
典型的なのは、他人の住居に侵入し(住居侵入罪・A)、2名の人を殺害する(殺人罪・B)(殺人罪・C)といった場合です。
検察官が、住居侵入罪を起訴するかしないかにより、2個の殺人罪が別罪になるか、科刑上一罪になるかが変わってきますから、検察官の訴追裁量として、そういった措置が許されるかが、理論上は問題なりますし、上記の裁判例でも、複数ある犯罪の一部を起訴するかしないかにより、地裁と家裁の双方に事件が係属するかどうかが決まってくるので、問題になったようです。判例時報の解説はわかりやすく、誰が作ったか知りませんが(おそらく解説文を書いた人でしょう、担当裁判官?)、わかりやすい図がついていたので、興味ある方はご覧いただきたいと思います。
東京高裁は、犯罪の一部を起訴するかしないかにより、地裁、家裁の双方に係属するかどうかが変わってくる場合であっても、起訴するかどうかは検察官の裁量の範囲内であると判断していますが、こういった技巧的な面により、被告人が科される刑の重さが変わってくるという事態は、確かに好ましいものではありませんから、当面は、審理にあたり、裁判所が、同一被告人に関する複数の裁判所での事件係属に目配りして、不当に重くならないように注意すべきであると言えるでしょう。