乏しい物証、判断注目 裁判所トップ強盗致傷事件

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200603180030.html

事件現場の路上の約70メートル東に地元住民が取り付けていた防犯カメラには事件発生とほぼ同時刻に現場から走り去るグループの映像が残っていた。
裁判所が選任した鑑定人の奈良先端科学技術大学院大学の千原国宏教授(画像情報処理学)は「誤差を考慮しても犯行グループの身長の範囲は160〜174センチ」と分析。ソウ被告の身長は183センチあり、弁護側は「別人だ」と主張する。
検察側は「走る際には前傾姿勢になるため、身長は幅を持たせて165〜186センチ」とする警視庁科学捜査研究所の鑑定を提出して反論した。
両被告の関与の有無を示す有力な物証がない中、共犯者とされた13歳少年の友人の女性が05年2月の公判で「事件当日の夜、少年と一緒にいた」と証言した。
少年が襲撃約30分前の午後8時ごろに女性に少年宅のインターホンを押すよう伝えたメールと、帰宅した女性に謝意を伝えるメールを午後10時前に送信していたことも明らかにした。
検察側は「犯行時間帯を含む2時間はメールのやりとりがなく、その間の犯行は可能だ」と反論したが、大阪地裁はこの証言の1週間後、両被告の保釈を認めた。

典型的な「冤罪型」の公判経緯をたどっているようですね。
無罪になった場合、おそらく決定的なのは、上記の「メール」の点でしょう。裁判所が、アリバイ証言後、間もなく、保釈を認めたのも、その時点で(その後はわかりませんが)「無罪」という心証を強く抱いたことによる可能性が極めて高いと思います。そうでなければ、この種の事件(大阪地裁所長!が被害にあった強盗致傷事件)で、裁判所が公判中に保釈は認めないでしょう。
また、よく、犯人が写った不鮮明な写真やビデオが残っていた場合に、警察や経験のない検察官は、誰だかわからないから、ということで安易に放置しがちですが、最新の科学技術を駆使することによって、上記のような、犯人性にかかわる事情がかなりわかる場合がありますから、安易に放置すべきではありません。この点は、昔、駆け出し検事の頃に、全面否認の事件を起訴し、犯人がATMで金を引き出す後ろ姿が防犯カメラの映像で残っていて、その点について十分検討していなかったため、公判担当検事にこっぴどく叱られたこともあって、非常に印象に残っています。