遠隔操作ウイルス事件、片山被告に懲役8年 東京地裁判決

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1502/04/news068.html

被告は、ウイルスに感染させた他人のPCを遠隔操作し、2012年8月に都内の幼稚園に無差別襲撃の予告メールを送信したなどとして10事件について起訴された。当初無罪を主張していたが、保釈中に犯人であることを認め、再勾留、無罪主張の撤回という異例の展開をたどった。

昨年11月の結審の時点で

判決は来年2月4日=PC遠隔操作―東京地裁
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20141127#p2

とコメントし、求刑通りの判決もあり得るのではないかと私は考えていたのですが、東京地裁は、量刑の「常道」通り、求刑の八掛けで懲役8年としてきたな、と、判決を聞いて、まず思いました。
なかなか総括しにくい事件ではあるのですが、犯人のITに関する知識、経験が悪用され、身元が、Tor使用で巧妙に隠蔽されて次々と犯行が重ねられて、誤認逮捕が続出するという、近年稀に見る特異な事件であったと振り返って思います。その後、犯人からのメール送付が続き、一気に劇場型の様相を呈したのも特異で、インターネット社会でこうした劇場型の犯罪が起きる、一つのモデルケースになった面もあるでしょう。
ただ、犯人側のやり過ぎから足がつき逮捕に至ったことは、巧妙、狡猾なこの種犯罪でも犯人はミスをする、ということを改めて感じさせられましたし、強力な弁護団がつき、注目を集めましたが、被告人自身の自作自演で自滅、というところにも、人間の弱さを感じます。いろいろな意味で特異な事件でした。
仮に、自白に転じず全面否認のままでも、報じられている流れや、私自身が複数の情報源から得た情報によれば、有罪になったのではないかと思われます。自作自演メールも、被告人なりの焦りがあったのではないかと推測されます。
それほど高いスキルがなくても、こういった犯行が犯せてしまうサイバー犯罪の危険性、ということも、私自身、強く感じています。個々のネットリテラシーを高め、不審なリンクは開かない、セキュリティ対策ソフトをアップデートしながら利用する、といったことを励行するとともに、横浜市役所のサイトであったような脆弱性を予め排除しておくような、サイト側の注意、対策もなお一層求められるでしょう。
誤認逮捕を続出させた警察捜査に与えた影響は大きく、今後も、警察における物的、人的態勢の強化が図られることになるはずであり、全体としてのセキュリティレベルを上げつつ、警察の捜査能力もより上げて、社会として、できる対処を着実にやっていくしかないと思います。
なお、公判でも、弁護人から、デジタルフォレンジックの不備、疑問が指摘されていたようであり、サイバー犯罪捜査における証拠確保、保全、解析の適正さや後日の検証可能性が確保されることは、今後も強く求められ、問題になる機会も増えるのではないかと思います。
被告人、弁護人が控訴する可能性があり、そうなれば今後も公判が続くことになりますが、1審判決が出て、1つの区切りがついたということは、私自身も感じています。