http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/02/16/10925.html
昨日、京都地裁へ行き、この公判を傍聴しました。傍聴人は、最初の頃にくらべ、減っていて、傍聴席の6割から7割程度が埋まっている感じでしたが、本件に対する傍聴人の意識の高さは強く感じられました。
まず、印象的だったのは、村井教授が、ウイニーの性能を非常に高く評価している、ということでした。「洗練された、優れた性能」といった証言が繰り返し出ており、非常に優れたP2Pソフトであることが、「日本におけるインターネットの父」(弁護人が村井教授に、「日本におけるインターネットの父と言われていますね?」と質問していたのには笑ってしまいましたが)により公判で明言された意義は大きい、と思いました。
また、この記事の中でも紹介されていますが、村井教授が、
さらに匿名性について、情報システムにおいては匿名性の確保は追及すべき重要性の高い技術だと説明。プライバシーの保護や、電子投票のシステムなどを考える上で、どのように匿名性を担保するのかといった研究は広く行なわれているとした。
といった証言をされていて、匿名イコール悪、匿名イコール権利侵害、といった「検察・警察ストーリー」に対し、研究者の立場から、はっきりと異論を唱えていたことも印象的でした。
村井教授の今回の証言の核心は、記事でも紹介されているように、
今回の事件に対しては「情報通信の基盤を開発することと、それがどう利用されたかを結び付けて考えられるべきではない。開発すること、運用すること、それがどのように利用されるかということは、分けて考えるべきだ」と語った。
という点ですが、証言の中では(私のメモによると)、
検察官が指摘するウイニーの特徴は、ウイニー特有のものではなく、P2Pソフトに共通する特徴であって、特に著作権法侵害を助長するものとは言えない。ウイニーの特徴は、どれも情報を効率よく共有、交換するためのもので、特定の利用には結びつかない。著作権を侵害するような情報を、問題があるものとして自動的に流通させないという仕組みを作ることは、情報の意図について一般的な表現方法を持ち合わせていない以上、不可能であり、問題情報を流通させるかどうかは専ら利用者側の問題であって、それをインフラストラクチャーが判別するのは不可能である。ファイル名でフィルタリングする、というのも、ファイル名が自由自在に付けられる以上、不可能である。
ということも述べられていて、優秀なP2Pソフトを開発、提供することが、必然的に(不可避的に)、著作権侵害を含む悪用の危険性も生み出すことになり、そういった必然的、不可避的な危険性の存在を、利用者側の責任とするだけでなく、開発、提供者側の責任、ということにしてしまえば、開発、提供者側としては必然的、不可避的な点で責任を問われることになってしまう、ということが明確に語られていたと思いました。
検察・警察ストーリーについて、「日本におけるインターネットの父」により、根本的な疑問が突きつけられた、という意味で、非常に意義のある証人尋問であった、と言えると思います。