著作者人格権不行使特約について

この点については、ライブドアブログの関係で、かなり議論が起きており、小倉先生も、

http://blog.goo.ne.jp/hwj-ogura/e/8dfa5ad2747f8b3d5b055d57f274e4ac
http://blog.goo.ne.jp/hwj-ogura/e/1a2f75c34b9d6cb4faa0b2d8826bfe94

で論じておられますが、無効説に立つことには問題があり、有効説に立った上で、その限界を考えて行くというのが正しい考え方ではないかと思います。
その理由は、小倉先生のブログでの説明や、そこで引用されている北海道大学の田村先生の見解(先ほど改めて田村先生の著作権法の該当部分を読んでみました)が妥当すると思います。
通常の人格権は、個人の人格そのものと密接不可分に結びついており、不行使特約、といったものは公序良俗に反して無効と考えられますが、著作者人格権は、通常の人格権と同質のものではあっても(この点は争いがあるようですが)、財産権的な性格が強く、また、他者による著作権の利用といった事態も視野に入れる必要などがあって、不行使特約を有効と考えないと種々の不都合が生じるのではないかと思います。
ただ、それとは別に、今回のライブドア

http://blog.livedoor.jp/staff/archives/9219857.html

といった告知を見ると、規約変更の背景等に関する説明が一切なく、これでは利用者が不安を覚えるのも無理はないのかな、という印象は受けました。
今日になって、補足として

http://blog.livedoor.jp/staff/archives/9326120.html

がアップされていますが、その中の

弊社は主に当サイトの宣伝を目的に利用する場合を想定して、当事者へ無償で利用することをこの規約で確認しておりますが、宣伝かどうかの定義をすることが困難な場合も考えられる為にこのような定義といたしました。

が、「主に」がどうもくせ者に見え(「主」に対し「従」は何だ?という疑問が当然生じます)、宣伝を全面に押し出したこの説明が、どうも胡散臭く見えてしまうのは、おそらく私だけではないでしょう。宣伝が主目的であれば、変更後の、

利用者は、弊社及び弊社の指定する者に対し、著作権等(著作者人格権の行使も含む)を行使しないものとします。

の「弊社の指定する者」がなぜ必要なのか?という疑問が生じてきます。
また、町村先生もブログ

http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2004/11/livedoorlivedoo.html#more

で指摘されていましたが、ブログの場合、ブログ作成者以外に、コメントをつけた人とか、そのブログに対してトラックバックした人など、どちらかというと外部に身を置きつつ関わり合いを持つ人が少なくなく、ライブドアの規約で「利用者」としている人が、どこまでを含み、また含みうるのかは、なかなか難しい問題なのではないか、という素朴な疑問を抱いています。
ライブドアブログ利用規約

http://blog.livedoor.com/rule.html

を見ると、第1条で、

「利用者」 本サービスを利用し、ウェブログを作成、公開する 個人、または組織、または法人

とされており、規約中の「利用者」という用語の使用方法を見ていると、どうも、ブログ主(変な言い方ですが、わかりやすさのためこう呼びます)を指していると思われ、コメントした人やトラックバックした人は含まれていないように読めます。ライブドアブログは、ログインしないとコメントがつけられない設定と、ログインしなくてもコメントできる設定の両方が可能なようですが(間違っていればご指摘下さい)、いずれにしても、ブログ主以外については、変更後の規定がそのまま適用されるというわけには行かないように思います。
ライブドアが、そういったところまで意識しているかどうかは、よくわかりません。