「法とコンピュータ学会」での発表レジュメ(小倉秀夫弁護士)

http://blog.goo.ne.jp/hwj-ogura/e/cd9c01ca99a3007b5f1c6ce8371ed811
http://blog.goo.ne.jp/hwj-ogura/e/bc2d5fde71367caf238e29683af073a0

この問題全体が鳥瞰される形で論じられており、参考になります。

この点に関しては、(1) 誰かがいつか特定の刑罰法規に抵触する行為に活用するかもしれないがそれでもかまわないという程度の認識では「故意」ありとするには足りないとする見解、(2) その道具ないしサービスが合法的な、反対できない目的のために広く用いられているときは(実際には、著作権を侵害しない実質的な利用がなされる可能性がありさえすれば)、当該道具ないしサービスを中立的に提供する行為は正当行為(刑法第35条)として違法性が阻却されるとする見解、(3)特許法第101条の趣旨を類推して、著作物の利用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出もしくは著作物の利用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその著作物の公衆による享受に不可欠なものにつき、その著作物が著作権により保護された著作物であること及びその物がその著作物の利用に用いられることを知りながら、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をした場合を除き、著作権侵害行為に利用された道具等の公衆への提供者は著作権侵害行為の幇助犯とはならないとする見解、(4) 中立的な行為による幇助に関しては原則として処罰可能性を制限すべきとする見解、(5) プロバイダ責任制限法第3条1項により不法行為責任が否定される場合には勿論解釈として刑事責任も否定されるとする見解などがあり得るところである。

刑事責任について、私は上記の中の(1)(2)を中心に考えていますが、(5)についても肯定する立場です。
ただ、(2)で、客観的な「可能性」だけではなく、やはり、行為者の主観面も加味して考えないと、「正当行為」かどうかは判断できないのではないかと考えています。