プロバイダの発信者情報開示

sarasaさんにコメントいただいたので(ブログでも取り上げていただいてありがとうございます)、少しコメントを。
現在、発信者情報開示については、①刑事事件で令状がある場合と、②プロバイダ責任制限法の要件を満たす場合については、求められるプロバイダ等としても対応方針が明確ですが、それ以外については、グレーというか、対応についてはっきりした方針が打ち出しにくい、というのが現状だと思います。
法的根拠や法令上の正当化根拠がなければ、応じられないのは当然ですが、「法的根拠がある場合」と言っても、まったくの任意(拒否しても何ら制裁がない)である場合と、拒否すると一定の制裁が課される場合(強制の要素がある)があり、前者についても、制裁はなくても、解釈上、「義務」であるとされている場合もあります。何に応じ何に応じるべきではないか、判断には悩ましいものがあります。
そういう状況の中で、明文の法的根拠がない場合であっても、何らかの対応をすべきではないかと思われるケースが生じることがあり、その典型的なケースが、

http://www.asahi.com/national/update/0828/018.html

ではないかと思います。
昔、刑法の教科書に、ドイツ(ローマ法?)の法格言(?)で、「緊急は法を持たない」という言葉が紹介されていましたが、緊急性がある場合に(このニュースの件で、情報開示がなされていなければ、人が死んでいた可能性が高いでしょう)、慎重な検討の中で、一般的な違法性阻却事由を根拠に開示を行う、という対応も、やむをえない、ということはあると思います(もちろん、濫用は戒められるべきですが)。