最近、台湾有事に関する前のめりな本が次々と出ていますが、本書は、それらとは一線を画し、冷静な目でこの問題を見ようとするものでした。著者が指摘するように、日本は一つの中国という立場を尊重すると正式に言明しているのであり、台湾が独立しようとする動きを中国が反乱として鎮圧しようとする動きを咎め立てするのは、法的には無理があります。中国による武力行使は是認できないことを、どのように従来の立場と整合させていくかという視点も重要でしょう。
著者が指摘するように、台湾有事で武力紛争に発展すれば、日本は経済的にも壊滅的な打撃を受けることになります。前のめりな議論とともに、そうならないためにはどうすべきかという議論も必須だと改めて感じました。