「二本の棘」

 

著者は、元兵庫県警捜査一課長ですが、現職中に捜査に関わった様々な事件を本書で回顧しています。こういった立場の人は、なかなか本を書かないもので、事件関係の本というとほとんどがジャーナリストが書いたものになりがちですが、その意味でも貴重なものがあると感じながら読みました。また、著者からは、緻密さ、丹念さといった、優秀な警察官にある良質なものが感じられました。

題名にある「二本の棘」とは、おそらく、本書でも登場するグリコ・森永事件、朝日新聞阪神支局銃撃事件などの一連の赤報隊事件を指しているのでしょう。捜査の経緯、背景、捜査陣内部の問題点など、赤裸々とまではいかないものの、かなり思い切って指摘しているものがあって、興味深く読みました。

現行の都道府県警察制度に内在する問題点や、刑事、警備・公安の大きな溝、といったことは繰り返し語られてきたことではありますが、対処、解明すべき犯罪事象がますます複雑化、グローバル化する中で、警察当局においても変わるべきは変わらないと大きな流れに遅れをとってしまうでしょう。

なかなかの良書で、こういった分野に関心を持つ人にはお勧めです。