日露戦争における旅順二〇三高地攻防戦は、日露戦争の帰趨に大きな影響を与えた著名な戦闘ですが、私自身、それについては専ら
で読んだ内容で捉えていて、それとともに
でも描かれている乃木希典の精神論偏重の愚将ぶりが強く印象付けられています。
しかし、その一方で旅順攻防戦、乃木希典の評価については、司馬遼太郎の書き振りは乃木希典に酷に過ぎるという話も繰り返しいろいろ読んできていて、一度、きっちりと書かれたものを読んでみたいと思っていたところ、上記の角川新書が出たのを知って、早速、通読してみました。結論として、期待に沿った内容で、非常に有益なものでした。
私なりにざっくりまとめてみると、
・旅順攻撃前の大本営、満州軍総司令部の見方や準備が不十分で、攻撃がなかなか成功しなかったのを乃木希典の第3軍だけの責任には帰せられないこと
・第3軍の作戦指導上、参謀長の優柔不断さが相当に問題であった一方、乃木希典は将兵から強く信頼され、決して無能ではなかったこと
・二〇三高地奪取前の総攻撃は繰り返し失敗に終わっているが、部分的に成功したものもあって、それについて乃木希典の作戦指導が奏功していたものもあったこと
・「坂の上の雲」では、二〇三高知の重要性に第3軍が愚かにも気づかないまま推移していたように書かれているが、決してそうではないこと
・ 二〇三高地奪取上、児玉源太郎の作戦指導が強く影響しているのは事実だが、それだけで奪取できたわけではなく、第3軍、乃木希典の作戦指導も相まって成功したこと
といったことであるように思いました。
「坂の上の雲」は、作品として優れた、おもしろいものですが、それはそれとして、旅順攻防戦の史実に基づく実態はどうであったかについては、客観的に直視、把握しておくべきことを改めて強く感じました。
私自身の乃木希典に対する見方は、今回の読書でかなり改まりました(それだけ無知だったということですが)。今度、乃木神社にでも参拝して謝りたいと思います。