「約束してくれないか、父さん:希望、苦難、そして決意の日々」

 

アメリカのバイデン大統領の著書ですが、新聞の書評で紹介されていたのを見て興味を感じ通読してみました。

バイデン氏の長男が、脳腫瘍で早世したことは、日本でも報じられ広く知られていますが、その経緯や、その間の副大統領としての難しい案件への取り組み、オバマ大統領後の大統領選へ出馬するかどうかの検討や葛藤、ヒラリー・クリントンを後継に推そうと考え(おそらく)、バイデン氏との友情は尊重しつつも大統領選については微妙にギクシャクするオバマ大統領との関係などが、同時進行で描かれて、緊張感の中でストーリーは進んでいきます。やがて長男は懸命の闘病後に早世し、バイデン氏は2016年大統領選への出馬を断念して本書は終わるのですが、その後、どうなったかは広く知られている通りです。

本書の解説にもあるように、本書は、バイデン氏が家族の不幸の中、一旦は大統領選への出馬を断念し、失意の中から再生していこうとしていた、再生の物語と言えるでしょう。執筆目的として(本書は2017 年時点で書かれている)、2020年大統領選への布石があったことは疑いなく、家族の不幸も政治に利用するしたたかさも感じないわけではありませんでしたが、叙述されている内容には、率直さ、心情を吐露していると感じるものがあり、政治家バイデンのコアな部分を垣間見るような思いがしました。

アメリカ副大統領が無用の長物的な位置づけになりやすい中、バイデン氏が、オバマ大統領の信頼にも拠りつつ、どういった活動をしていたかも紹介されていて、なかなか読ませる本だったなと感じています。