「児童養護施設施設長殺害事件 児童福祉制度の狭間に落ちた「子ども」たちの悲鳴」 

 

書店でたまたま見かけ、この事件は印象に残っていたので読んでみました。NHK番組のほうはまだ観ていないので、観られたら観たいと考えています。

被害者は、児童養護施設の施設長として、本件の犯人に対しても、また、多くの子どもたち、施設を出て成人に達した人々に対しても、職員、施設長という枠を越えてまで親身に、誠実に、日夜努力して接していた方で、犯人側にも精神上の問題があったとはいえ(それにより不起訴処分になっています)、非常に残念な結果になってしまいました。

本書では、そういった殺人事件の経緯だけでなく、このような事件が起きる背景にある児童養護施設やその置かれた環境における様々な問題点を丹念に紹介していて、読んでいてとても参考になるものがありました。

読んで特に強く感じたのは、今後も、児童養護施設やその他の施設において、充実したケアができるだけの予算措置、人員配置を強化する必要があり、また、原則的な収容期限である18歳を経過した後も、個々のケースに合わせつつ、必要なケアが行えるようにすべきだろうということでした。

社会には、不幸な家庭に生まれ育ち、身体的、精神的なハンディも抱えつつ、もがき、苦しむ人々が確実に存在しています。そういった人々に、光を当て必要なサポートをしていける、そういう国家社会を我々はさらに目指すべきだと、読み終えて改めて感じました。