助け求める姿、忘れられず 東京大空襲で出動の元消防士

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG10H0J_Q5A310C1000000/

「助けられなかった人たちのことは何年たっても頭から離れない」。救助を求めてきた20人ほどが目の前で風にあおられた炎に包まれた。ポンプ車は燃えさかる民家に誤って突入し、後退したところで停止した。ふと気付くと、乗員は自分と運転手の2人だけになっていた。炎の中を100メートルほど走り、素掘りの防空壕(ごう)に頭から突っ込んで夜明けを待った。

私が以前に住んでいた場所は、東京大空襲で甚大な被害を受けたエリアで、近くに慰霊のお地蔵さんがあって、前を通るときには手を合わせて犠牲者の冥福を祈ることがありました。その近くでは、戦後、仮埋葬された犠牲者の遺骨が発見されたこともあったとのことで、今では平和の中にある街が、雨あられと降ってくる焼夷弾により阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた当時を想起することが今でもありますが、私の脳裏に浮かぶ姿よりもっと悲惨、凄惨なものだったのだろうと思います。戦後の日本は、こうした甚大な犠牲の上に築かれていることを、我々は決して忘れてはいけないということを、改めて強く感じます。
国土を蹂躙されないような、精強な防衛力を保持することが大切である一方で、日本が置かれた状況における適度なパワーバランスや日本が果たすべき役割についても、敗戦までの日本が種々の面で行き過ぎていたことにも思いを致しつつ、謙抑的に臨まなければならないのではないかという気がします。国策を誤り戦争が起きてしまった先にあるものは、こうした東京大空襲のような事態であるということを、特に指導者は肝に銘じて教訓としなければならないでしょう。
東京大空襲後70周年という節目のこの日に、再びこのような悲劇が起きないようにあらゆる可能な手段を講じなければならないという誓いを新たにしつつ、犠牲者のご冥福をお祈りします。