http://www.keisui.co.jp/cgi/kensaku.cgi?isbn=ISBN978-4-86327-148-7
著者から贈っていただきました。ありがとうございます。
著者のうち、清永氏は

- 作者: 清永聡
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/01
- メディア: 新書
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を先に世に出していて、研究者である矢澤氏とともに、この「戦時司法の諸相」を執筆したとのことです。
「気骨の判決」については、以前、
気骨の判決―東條英機と闘った裁判官
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080816#1218846927
裁判員裁判ならどうなる 長期の公判、多大な負担
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090817#1250449454
とコメントしたことがあり、この「戦時司法の諸相」も、少し読んでみましたが、吉田久大審院判事のプロフィールや、翼賛選挙無効判決が出た経緯、その背景などについて、丹念な調査に基づいて詳細に書かれていて、とても価値のある労作であると感じ入りました。
東京オリンピックの年に生まれた私が、こんなことを言うのも、やや変かもしれませんが、戦前、特に、太平洋戦争下で軍部に抵抗するということは、生命への具体的な危険を伴うことで、並大抵の覚悟ではできないことでした。実際、本書でも紹介されていますが、東條首相の差し金による中野正剛事件で勾留請求に失敗した検事は、懲罰召集(召集後は激戦地に送られ戦死、戦病死するのが通例)されていますし、駐英大使まで務めた吉田茂のような人物ですら、治安維持法違反で逮捕、勾留されるほどでした。
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070120#1169288028
そういった中で、翼賛選挙無効判決を出した吉田判事らの気骨には素晴らしいものがあり、日本における司法の歴史の中で、大津事件に匹敵するか、それを上回る価値があると言っても過言ではないでしょう。
税込7770円と、安くない本ですが、今後、法曹を目指す人や、まだ可塑性のある若手法曹は、是非、この本を座右の書にして、国家国民のため一命を賭すことも辞さない、気骨のある法曹を目指してもらいたいと思います。