こんな日弁連に誰がした?

こんな日弁連に誰がした? (平凡社新書)

こんな日弁連に誰がした? (平凡社新書)

私なら、「日弁連は昔からこうだった」という題名にしたかもしれません。
最近、評判になっているので、きちんと身銭を切って買って読んでみました。文章が読みやすく、なかなか参考になる内容で、買って読むに値する本でした。
日弁連(日本弁護士連合会)が、1990年代以降の司法改革の流れの中で迷走し、法曹人口大増員を招いてしまい、長年の懸案である法曹一元(弁護士から裁判官、検察官に任官するというシステム)も実現には程遠い中、今や、法曹人口の抑制のため狂奔している、その敗北の歴史を具体的に追っていて、資料をよく調べているなという印象を強く受けました。
日弁連を「左翼弁護士」が支配してきたという著者の見方はあたっていると思いますが、東西冷戦構造の中では、一種のパワーバランスとして、日弁連がそういった立場で動いたことには、歴史的には一定の意味があったように思います。問題は、東西冷戦構造が崩壊し、日本ではバブル経済も崩壊して、戦後に形成されてきた我が国における様々な社会構造の変革が問題になってきた中で、日弁連が、法曹界、弁護士業界といったものの将来を見据えて、的確な見解を打ち出し関係者に影響力を発揮できなかったということでしょう。その意味では、私も著者と基本的には同じ考え方です。
では、今後、どうすべきかということになると、現在の日弁連会長選挙に見られるように、今さら自分達が騒いでもどうすることもできない法曹人口問題が争点になるような噴飯ものの状態で、お先真っ暗というしかなく、私には何の処方箋もありません。