国際離婚:子を連れ戻そうと…父親逮捕、米で波紋 福岡

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20091013k0000e040037000c.html

逮捕容疑は先月28日午前7時45分ごろ、柳川市内で、日本人の元妻に付き添われて通学途中だった小学3年の長男(9)と小学1年の長女(6)を、レンタカーに無理やり乗せ、連れ去ったとしている。

容疑者と元妻との間で▽子は元妻と州内に住み、年4カ月はサボイ容疑者と過ごす▽どちらかが子と州外に引っ越す場合は事前に相手に連絡し、同意を得る▽財産の半分を元妻に与え、養育費も支払う−−などが取り決められた。
ところが、元妻は8月、連絡せずに2人の子と帰国。このため裁判所は子の監護権を同容疑者のものと認め、地元警察も子の略取容疑で元妻の逮捕状を取り行方を追っていた。

逮捕された父親の行為が誘拐罪の構成要件に該当し違法な行為と言えるかどうかについては、微妙かつ評価が難しいものがありますが、上記の記事にあるような、元妻が子供とともに日本に帰国した行為が、米国法に照らし違法なものであったとしても、そのことから直ちに元妻による子供の養育状態、監護状態が、誘拐罪の保護法益性を喪失しているとまでは言えないのではないかと思います。
特に問題となるのは、父親の行為が、自力救済として違法性が阻却されないか、ということではないかと思われますが、日本がハーグ条約未締結で、上記のような事態が生じても元妻の下にいる子を元の国へ戻すべき法的義務を負っていない以上、日本法としての法秩序の観点からは、自力救済行為として違法性が阻却されるとまで見るのは困難ではないかという印象を受けます。ただ、責任レベルで、適法行為の期待可能性が相当程度低い事案ということは言え、今後の刑事処分にあたっては、その点を重視して結論が出される必要はあるでしょう。
日本として、このままハーグ条約未締結のまま国際的な批判を受け続けたままで良いのか、この問題について民事面で国際的に統一したルールに則り紛争を解決するスキームを確立しておいたほうが、刑事面での誘拐罪等の問題が生じにくく、かえって紛争の深刻化を回避することにつながるのではないか、といったことを、今後、早急に検討すべき段階に来ているような気がします。