弁護士VS司法書士 債務整理の境界は 大阪高裁で訴訟加熱

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090614-00000529-san-soci

男性は司法書士に迫られ退職したが、19年7月に解雇の無効を主張し、地位確認と損害賠償を求めて提訴。裁判では男性の通報が公益通報者保護法の対象になるかが争点になり、その前提として、司法書士の代理業務の適法性が争われることになった。
法律では、司法書士に認められた代理業務の範囲は「訴訟の目的の価額が140万円を超えない」と定められている。ただ、この解釈をめぐっては弁護士会司法書士会がかねてから対立。単純な債務整理の場合、「整理の対象になる全債権額」(債権額説)とする弁護士会に対し、司法書士会は「整理によって圧縮される債権額」(受益説)を主張し、実際に受益説に基づき業務を行っている。

司法書士債務整理業務に非弁行為があるとの認識を強めていた大阪弁護士会がこの訴訟に着目。非弁問題などを扱っている弁護士5人が原告側に加わった。満村和宏・同会副会長は「1審判決が確定すれば、司法書士らの非弁行為を調査し、刑事告発などの厳しい対応も予定している」と話す。
一方、司法書士側は元法務省民事局課長らが執筆した「注釈司法書士法」に受益説が掲載されていることを証拠提出し、「1審判決は債務整理現場に混乱を与える」と主張した。日本司法書士会連合会は裁判には直接関わっていないものの、「これまで司法書士が多重債務者の救済に大きな役割を果たしてきたことを忘れないでほしい」と実績を強調している。
法務省民事局もこの裁判を意識しつつ、「注釈司法書士法の内容は公式見解ではなく私見。法解釈について法務省としての見解はない」と中立の立場。原告と被告の関係者はこうした状況に「事務所内のトラブルがこんな風に注目されるとは」と困惑しているという。

すごい状態になっているようで、かつての冷戦構造下の「代理戦争」を思い起こさせますが、法務省の「見解はない。」という立場は無責任でしょう。司法書士法について有権解釈を示すべきなのは法務省であり、こういうところで「中立」というのは、単に日和見しているだけでしかないと思います。
私自身の感覚としては、実務上の訴額の取り扱いに照らすと、債権額説のほうが分があるのではないかと思いますが、問題の本質は、司法書士が取り扱える債務整理をどこで線引きするかであり、それが不明確な基準でしか切り分けられていないのであれば、法改正も含め、基準を明確化して無用な紛争が起きないようにすることこそ急務でしょう。
弁護士が増えれば、他の隣接法律職が、従来、手掛けてきた分野に進出するという動きも大きくなることは確実で、この種の紛争が、今後、ますます増える可能性は高そうです。