<法科大学院>教員足りず質低下 乱立で合格率低迷

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090108-00000001-mai-soci

当初想定された法科大学院の総定員は4000人程度。しかし、多くの大学が学生を呼び込む経営戦略の看板と位置づけたため、設立された法科大学院は74校に上り、総定員は約5800人に膨れ上がった。その結果、学生の質の維持が難しくなり、専任教員や実務家教員として期待された現職の検事や弁護士、裁判官は不足した。
新司法試験に合格した司法修習生の実力低下も問題になった。08年には1年間の修習終了後の卒業試験で全体の6%に当たる113人が不合格になった。不合格者は翌年の試験まで事実上留年を余儀なくされる。最高裁は「実力にばらつきがあり下位層の数が増加している」と指摘した。

最近、特に感じるのは、従来の法曹養成制度においては、司法研修所が中核となり、実務修習地における法曹三者の協力の下、司法修習生に対する丁寧な指導というものができる態勢になっていて、そういった態勢は、司法修習終了後も、裁判所、検察庁では配属先における先輩や上司からの指導、各種研修、弁護士にあっては当初に所属した事務所における指導といったことで継続していたものが、急激に合格者を増やしたことで今や崩壊しつつあり、このままでは、手から手へと指導することで継承、維持されてきたいろいろな伝統、手法、ノウハウといったことが継承、維持できなくなり、法曹全体のレベルが長期的に低下して行く恐れがあるということです。
そういった恐れが現実化しているのが、上記のような「下位層の増加」であるという見方も可能でしょう。
実務法曹は、自分自身が上記のような環境の中で成長してきていて、自分がやってもらったことは返して行く必要があるという意識を持っている人が多く、かつ、そうすることで後継者を育て自分自身が楽になりたいという意識も働いていたものでしたが、ここまで法曹人口が激増すると、教えるべき相手が多すぎて教えきれない、ということにならざるを得ず、既にそういった状況にはなっているようです。外国の制度の模倣、パロディでしかなく何の伝統もない法科大学院に、そのような機能を期待するのがそもそも無理であり、制度設計自体に致命的な問題があったということは、もはや明らかと言うしかないでしょう。
裁判員制度も同様ですが、駄目なものとわかっていながら強行する、無理矢理維持する、ということほど愚かなことはなく、駄目なものは大きく改善するとか、思い切ってやめてしまうということが必要で、その勇気を持つべきでしょう。日米が開戦すれば必ず日本が負ける、とわかっていたのなら、開戦を何としてでも回避すべきであった、ということと同じです。
今さら、しがない弁護士が言っても詮無いことですが、裁判員制度は実施を停止して制度を大幅に見直す、法科大学院制度も大幅に見直し、司法研修所を中核とした法曹養成制度を再構築し、大金をはたいて教育能力が低い法科大学院で学び三振法務博士になって身の振り方に困る人が出ないようにする、といったことを、真剣に考えないと、日本は、司法の分野でも二流、三流の国へと確実に転落して行くでしょう。