性同一性障害者に対する警察留置場における処遇につき、違法性が認められた事例(東京地裁平成18年3月29日判決・判例時報1935号84頁)

判例時報の判旨が長いので、端折って上記のようにまとめましたが、判例時報では、

1 戸籍上及び生物学上の性が男性であるが、内心における性が女性であるとの確信を有し、性適合手術及び豊胸手術を受けている性同一性障害者に対する身体検査においては、特段の事情のない限り、女子職員が身体検査を行うか、医師若しくは成年の女子を立ち会わせなければならないと解するのが相当であるとされた事例
2 留置場の管理者は、右のような性同一性傷害者を留置する場合には、その名誉、羞恥心及び貞操等を保護し、留置場内の規律を維持するため、原則として、男子と区分して留置すべきであるとされた事例

と紹介されています。慰謝料として30万円が認容されています。その後、控訴申立がされています。
判例時報のコメントで、大島俊之「拘置所・刑務所における性同一性障害者の処遇」(性同一性障害と法・323頁)が紹介されていて、この種の問題がいろいろと生じていることがうかがわれます。
問題状況としては、留置管理権と被留置者の人格権が対立し、後者への配慮に欠けた処遇が前者の違法を来す場合がある、ということになるでしょう。
この種の紛争は、今後も起きがちであり、参考になる事例ではないかと思いました