「ライブドア監査人の告白」

ライブドア監査人の告白

ライブドア監査人の告白

表紙に、六本木ヒルズ森タワーの写真があって、いかにも、どろどろした欲望が満載された現代版「バベルの塔」という感じです。
昨日、その六本木ヒルズ森タワー内の書店をぶらぶらしていたところ、見つけ、何だこれ、暴露本?と思いつつ、興味を感じ購入しました。土日に、京都で刑法学会があるため、夜、京都へ新幹線で移動する途中、ずっと読んでいましたが、非常に真面目な内容で、一気に8割ほど読みました。ホテルの部屋でも読んでいて、読み終えた後に寝ようと思っています。
いろいろと注目点はあるのですが、まず、言えるのは、さすがに公認会計士が書いたものだけに、今回のライブドア事件で起訴の対象となった行為について、非常にわかりやすく解説している、ということです。これだけでも一読の価値があると思います。「こういう行為が刑事責任を問われてよいのか?」といった感想を述べていた人々は、特に、読んでみるとよいと思います。堀江被告人がどこまで関与しているかはともかく、実務面では宮内被告人主導で行われたことは明らかと認められ、その宮内被告人が、起訴事実を認めた、ということは、検察が描いた事件の構図が基本的に正しかった、ということを示していると言えるでしょう。
また、ライブドアに対し、監査法人やその内部の人々が、どのような態度で臨んでいたか、ということも、かなり赤裸々に語られていて、単に「監査法人」イコール「悪玉」という単純な話ではなかった、ということもうかがえます(ただ、この辺は、著者なりの真実、という面があるかもしれず、慎重な評価が必要でしょう)。
読んでいて感じるのは、上場会社という自覚に欠け、法令遵守を軽視するライブドア上層部の安易な姿勢であり、そういった会社に対する、監査法人が果たす役割の重要性と限界、ということでした。この点は、自分自身、監査法人公認会計士に対し、ちょっと厳しく見過ぎていた点があるな、と、やや見解を改めた面もありました。
この事件に興味を持つ人には、お勧めできる一冊だと思います。