手錠・腰縄姿公表は違法 カレー事件廷内画訴訟で最高裁

http://www.asahi.com/national/update/1110/TKY200511100243.html

一、二審は(1)対象が公共の利害に関する事柄(2)もっぱら公益目的(3)手段が相当――という3要素で違法性を判断したが、第一小法廷は(1)や(2)の枠組みは使わなかった。抽象的な概念だけで議論すると水掛け論に陥りやすいため、より分かりやすい要素をもとに検討し直したとみられる。

最高裁のサイトでもアップされています。

http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/%24DefaultView/F335CDD118B07341492570B50028D557?OpenDocument

この判例で、先例となるのは、上記の記事でも指摘されている、

(1) 人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照)。もっとも,人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。

という肖像権侵害の判断基準の部分と、イラストの特質に着目した、

(2) 人は,自己の容ぼう等を描写したイラスト画についても,これをみだりに公表されない人格的利益を有すると解するのが相当である。しかしながら,人の容ぼう等を撮影した写真は,カメラのレンズがとらえた被撮影者の容ぼう等を化学的方法等により再現したものであり,それが公表された場合は,被撮影者の容ぼう等をありのままに示したものであることを前提とした受け取り方をされるものである。これに対し,人の容ぼう等を描写したイラスト画は,その描写に作者の主観や技術が反映するものであり,それが公表された場合も,作者の主観や技術を反映したものであることを前提とした受け取り方をされるものである。したがって,人の容ぼう等を描写したイラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては,写真とは異なるイラスト画の上記特質が参酌されなければならない。

という部分でしょう。
肖像権侵害について、原審、原々審のような基準で判断すると、侵害されるほうの事情など、考慮の対象から漏れ落ちてしまう事情が増えてしまうという欠点があると思います。その点、今回、最高裁が示した基準であれば、総合的な考慮が可能であり、支持できると思います。
また、イラストについて、原審、原々審では、写真と一括りにされていましたが、写真とはまったく同一とは言えないのは、今回、最高裁が指摘しているとおりであり、よりきめ細かな判断をすべきということを最高裁が指摘したという点で、先例として価値があると思います。
今後の肖像権が問題となる訴訟に影響を与える、非常に重要な判例であると言えるでしょう。