日本刑法学会大会(札幌)・1日目午後・2日目午前

昨日になりますが、1日目午後は、共同研究の分科会が行われ、私は、「行為・実行・帰属」というテーマの分科会に参加しました。
刑法を少しでも学んだ者であればお馴染みの「実行行為」という概念ですが、最近、「実行行為とは何か」を考えているだけでは解決困難な事件が出ていて、実行行為概念不要説も出現する状況の中で、行為、実行、帰属という基本に立ち返って考えてみようという、なかなか意欲的な分科会でした。
意欲的すぎて(?)、時々、意識が遠のきつつも、興味深く聴いていましたが、聴きながら、実務家と研究者の感覚の違いを感じました。
実務家は、まず事実から出発する、という感覚を持っているので、こういった研究会を行う場合は、問題となった事例の事実関係を具体的に紹介し、その上で、分析を行うというスタイルを取るでしょう。これに対し、今回の分科会では、発表者の先生方が次々と立って、抽象的、難解な理論を発表し、その後、会場から、更に抽象的、難解な質問が相次ぎ、それに対して抽象的、難解な答えが返る、という展開でした(「難解」というのは私の能力不足の故かもしれませんが)。それはそれで、なかなか興味深いものがありましたが、この分科会が、最近出た複数の判例に触発されたものである以上(と私は理解しました)、そういった最近の事件について、事実関係を具体的に紹介の上、それらに即した発表とか質疑応答といったものが行われれば、よりわかりやすく、参加者の脳裏に残るものになったのではないかと感じました。刑法学会の発表というのは、伝統的にこういうスタイルで、門外漢のないものねだり、なのかもしれませんが。
その辺の感覚が、取り扱っている事件について必ず一定の結論(起訴不起訴、有罪無罪など)を出すことを宿命づけられている実務家と、そうではない研究者では異なっているのかもしれない、という印象も持ちました。
昨夜は、札幌在住の知人、刑法学会参加者と3名(ちなみに、いずれも男性)で、ススキノ近辺で痛飲し、滞在先のホテルに戻りました。その影響や、宿泊しているホテルが温泉付きで、せっかくなので、朝、温泉(露天風呂付き)に入ったりしていた関係で、本日午前中の研究報告は、最後の報告を少し聴いただけで終わりました。大阪経済法科大学の永井善之先生の「サイバー・ポルノ規制と刑事法改正」は聴きたいと思っていたのですが、聴き逃してしまったので、配布されたレジュメ等できちんと押さえておきたいと思っています。

追記1:

上記の「温泉付きホテル」は、ここです。

http://www.jasmacplaza.jp/index.htm

仕事も遊びも目一杯やりたい、という人にはお薦めです。

追記2:

上記の「紹介されていた最近の事件」について、私が予習していなかったので事案自体を知らなかった、と誤解されている向きがあるようですが(笑)、特に特殊な事案でもなく、判例誌などをごく普通に読んでいれば、私程度の「学識」でも知っているようなもので、ここで言っているのはそういう問題ではない(「予習」していない人にもわかりやすく、なんて、さすがに言わないですよ、「刑法学会」ですから)、ということだけ指摘しておきます。目くじらたてずに、しがない実務家の率直な感想ということでお読み下さい。>皆様