元特捜検事の田中森一さんが語る〜「調書はいかにして作成されるか」

http://www.news.janjan.jp/living/0801/0801289764/1.php

今や、時代の寵児化している田中氏ですが、元検事らしい、リアルな体験談が語られていて、一般の人々にとっては参考になるのではないかと思います。

調書をつくったら被疑者に読んできかせ、署名をさせるそうですが、裁判所で違うことを言う場合があるので、裁判所で言っていることは嘘でこっちが信用できるようにつくっていくためにわざと訂正の申立をさせる場合があるそうです。

たとえば、名前の漢字をわざと間違えて書き、そこを訂正させてそれ以外のことは間違いがないと署名させれば、肝心のところが違うと裁判で言っても、検事が「でもあなた、読んで聞かせてもらったでしょ。名前の違いを訂正したでしょ。そんな重要なことなんで申立しないのか、あなた、嘘ついたらいかんよ」と理詰めでくると反論できず、裁判官は検事の言うことを信用するのだそうです。

この手法は確かにありますね。よく、公判で、「早口で読み聞かせられてよくわからないまま署名した」とか、「訂正申し立てができる状況にはなかった」といった主張が、被告人、弁護人から出ますが、何気ない点で、訂正申し立てがなされていると、検察官としては、「よくわからないどころか、注意深く内容を確認しているからこそ、こういった細かい点で訂正申し立てができた」「実際に、訂正申し立てを行っていて、やればできる状況であった」と主張しやすくなります。
そもそも、訂正申し立てで、検察官にとって必ず押さえておくべき点は、訂正した後に、「それ以外は間違いなく訂正すべき点はありません」という一言で、これがあることで、内容の確認を十分行った、という「外形」が、より強くかもしだされる効果が出てきます。
この種のテクニック、というものはいろいろあって、記事の中で、「相手はプロ、普通の人は太刀打ちできない」とあるのは、確かに、その通りであるというしかないでしょう。
取調べの可視化の必要性、ということは、こういったところからも求められていると言えるように思います。

<厚生年金>転記作業で派遣の中国人ら大量ミス

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080130-00000146-mai-soci

田中昭という名前を「田」「中昭」と書き写すなど、姓と名の区分がつかないミスが多発。社保庁は全員日本人にするよう要望し、1月末までだった派遣は12月20日で打ち切った。誤記された記録は修正したという。
社保庁は「ミスのあった記録件数は分からない。派遣会社からは、テストした優秀な人を選んだと説明があった」と釈明。

日本人の名前というのは、いろいろな意味で難しいもので、例えば、「さいとう」という名字でも、「斉藤」「齊藤」「斎藤」「齋藤」と何種類もあったり、テストで優秀な外国人、程度では対応できない要素があまりにも多く、外国人にこういった作業を担当させることが、そもそも無理、という気がします。

【法廷から】執行猶予で示談金残額支払い?

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080130/trl0801301058001-n1.htm

示談について話が及ぶと、弁護人は鼻息を荒くした。
「被害者に示談の説明をしたとき、(100万円のうち)まず30万円支払い、執行猶予判決が出たら残りの70万円を払うと約束ができていた。ところが、検察官が出してきた証拠と話が違う。加害者には『実刑になったら70万円を払えません』と言っている」
弁護人が問題にしたのは、検察側が提出した被害者の示談後の供述調書。弁護人が読み上げた内容によると、調書では「残額も支払わなければ勘弁しない」となっており、これに弁護士が「話が違う」と憤っていたのだ。
刑事弁護に詳しいベテラン弁護士によると、執行猶予判決が出たら残額を支払うという形の示談のやり方は、「あまり聞かないし、一般的ではない」という。当事者間で合意ができているのならば問題ないとはいえ、こうした示談のやり方には違和感を覚えた。

執行猶予になるかどうかは、あくまで裁判所が決めることなので、執行猶予にしろ、しないと残額は払えないぞ、という示談は、裁判所に与える印象があまり良くないものになってしまう可能性があるでしょう。そもそも、「実刑になったら70万円を払えません」と言っても、刑務所を出て再び収入が得られれば、分割でも払えるだろう、と言われてしまう可能性があります。
弁護人の鼻息が本当に荒かったのかどうか、見ていないのでよくわかりませんが、ここは、鼻息を荒くしたり開き直ったりするところではなく、被告人に執行猶予を付し社会内で着実に更生することが、同時に、被害者救済にもなり望ましい、と裁判所をきちんと説得すべきところ、という印象を受けますね。

中小ISP向けに違法・有害情報の相談窓口、通信業界4団体が設置


http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/01/31/18301.html

特に中小のプロバイダーは、「必ずしも法令の内容に精通しておらず、関係する機関や専門家に容易に相談できる状況にない場合もある」(テレコムサービス協会)ため、対応が困難なケースが増えているという。
そこで4団体は31日、違法・有害情報に関する相談を受け付ける「事業者相談センター」をテレコムサービス協会内に設置。当面は、4団体の会員事業者のみの相談を受け付けるが、4月をめどに4団体に属していないプロバイダーからの相談にも対応する予定だという。

弁護士でも、この種の問題に対応できる人は、意外と少ないのが実状でしょうね。以前、警察でサイバー犯罪等を数多く取り扱っている人から、その人が所属している警察内の組織に、ネットトラブルについての弁護士からの相談が多くて、弁護士である以上は警察官に聞かず自分で判断してほしい、と愚痴めいたことを言われたことがありました。プロバイダーとはいえ、この種の問題をどこの誰に相談してよいかわからない、というケースは、こういった相談窓口が設けられるほどですから、少なくないのでしょう。
ただ、「違法」までには至らない「有害」情報については、個々のサイト等における利用規約上、どう対処するかについて、利用規約や運営者のポリシー等により、様々な対応があり得ますから、相談することで、ますますどう対応してよいかわからなくなる、という可能性もあるでしょう。

公判前整理手続

今日の午後、ある事件の公判前整理手続期日(第2回)がありました。1時間余り、裁判官主宰の下、主任弁護人である私に対しても次々と質問等があり、それに対応し、終了後はかなりの疲労感がありました。私が、最も元気で活躍していたのは、1990年代の後半でしたが、あの頃は、この程度で疲労感など微塵も感じなかったな、と思い、年をとったという実感が、寂しさの中にありました。
一部のマスコミ関係者にはお話しましたが、公判前の「整理」というのは、こうしてやってみると、なかなか難しいもので、上記のような疲労感は、年をとったからというだけではなく、やはり、手続自体に難しさがあり、また、慣れていないから、ということもあるように思います。この種の手続は、経験したくても簡単に経験できるものではなく、私自身の勉強という意味でも参考になると感じています。
徐々に、公判開始へ向け手続は進行しつつあり、季節の「春」とともに、事件も春を迎えたい、というところです。