犯罪を誘発し「違法」、車上荒らしの男性に無罪

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170324-00050060-yom-soci

判決によると、男性は昨年9月6日早朝、鹿児島県伊佐市のスーパー敷地内で、無施錠で駐車中だった軽トラックから発泡酒1箱(約2500円相当)を盗んだとして、張り込み中の県警伊佐署員に取り押さえられた。現場周辺では車上荒らしが相次いでおり、署員は夜中に車をのぞき込む男性の姿を数日前から確認し、行動確認を行っていた。
判決は、「署員は現行犯で検挙するため、軽トラックに発泡酒を置いて無施錠にし、車上狙いをするのを待ち受けていたと推認できる」と指摘。通常の捜査手法では摘発が困難と認める事情はなく、今回のような捜査を行う必要もなかったとし、「任意捜査で許容される範囲を逸脱しており、違法性は重大」と結論づけた。

こういった「おとり捜査」については、様々な議論があり違法となる場合につき論者により見解が異なりますが、最高裁判例では、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20040714#p3
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20040716#p4

でコメントしたように、

少なくとも,直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において,通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に,機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは,刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容されるものと解すべきである

とされていて、本件のように直接の被害者が存在するタイプの犯罪について、どのような要件でおとり捜査が許容されるのか、そもそも許されないのか、最高裁判例の見解は出ていない状況にあると思います。
上記の報道での事実関係を見る限り、従来の場合分けとしての「犯意誘発型」(捜査側が犯罪を犯す意思を起こさせる、違法と判断されやすい)「機会提供型」(捜査側は既に犯意を有している者に機会を提供するにとどまる、関与程度にもよるが適法と判断される余地が比較的大きいと考えられている)のうちの、どちらかというと機会提供型に属するように思われ、それだけに微妙さを感じるものがあります。
今後、検察官が控訴するのであれば、上級審での判断に注目されるものがあるでしょう。