<被害者保護>性犯罪 匿名で起訴状 最高検が各地検に要請

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130615-00000011-mai-soci

関係者によると、匿名の起訴状を作成したのは関東地方の地検。携帯電話のメールを通じて知り合った女性にわいせつ行為をしたとされる男の起訴状で、女性の氏名を伏せ「携帯のメールアドレスが○○@○○〇〇だった女性」と記した。起訴前に女性の意向も確認し、女性は既にアドレスを変更したという。

この問題を考えるにあたっては、

1 起訴状記載の訴因はどこまで特定されている必要があるか
2 被害者特定事項をどこまで秘匿するのか

という、2点が問題になるでしょう。
訴因の特定は、刑事訴訟法上、議論されている問題ですが、現在の通説、実務は、他の犯罪事実と識別できる程度に特定されていれば特定の要請は満たす、と考えますから、被害者名が上記のように匿名になっていても、被害事実そのものや犯罪の実行行為等により、他の犯罪事実を識別できる程度に特定されていれば、特定の要請は満たすと言ってよいでしょう。
問題は2で、現行の刑事訴訟法では、被害者を特定する事項は、必要に応じ法廷では公開せず、また、被告人にも知られないような措置は講じるものの、弁護人に対しては、秘匿はできない、という構造になっています。被害者特定事項が弁護人にすらわからないようでは、防御権保障が全うされない恐れが、おそらくあるからで、この問題の核心は、被害者保護と被告人の防御権保障を、どこで両立させるか、ということにあると私は考えます。
今後、この点に関する議論を進める上では、こういった核心を念頭に置きながら、検察官から弁護人への証拠開示、情報提供をいかなるものにするか、弁護人に開示した証拠、情報中、防御権行使と両立させつつ、被告人への提供を制限する(現行の制度よりも強く)ことが可能、妥当か、といったことを、きめ細かく検討する必要があると思います。