弁護士刺殺、審理差し戻し 事実認定で手続き違反

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120925/trl12092520170011-n1.htm

卯木裁判長は判決理由で、被告が拳銃の引き金を引いた行為について、「殺意を否定しているのに、争点としないまま重要事実を認定した」と指摘、一審には事実認定に法令手続き違反があったと判断した。

現住建造物等放火被告事件につき、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる放火方法を認定したことが違法とされた事例
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20120823#1345731392

で、コメントしたように、どういった場合に訴因変更が必要になるかについて、最決平成13年4月11日で、基本的に従来の抽象的防御説に立ちつつも訴因の特定に関する識別説(対するのが防御権説)も取り込んだ基準が定立されていて、審判対象画定のため必要な事項が変動する場合は訴因変更を要し(必須)、そうでない場合であっても、被告人の防御にとって重要な事項が変動する場合は原則として訴因変更を要するが、審理経過等から被告人に不意打ちを与えず、判決で認定される事実が訴因事実に比べ被告人に不利益でなければ例外的に訴因変更を要しない、とされています。
上記の記事にある「被告が拳銃の引き金を引いた行為」が、訴因上、どのような取扱になっていたのかよくわかりませんが、おそらく、起訴状の訴因には含まれていなかったか、訴因記載の事実とは異なる態様のものとして原判決が認定したのではないかと推測されます。刺殺に至っているという本件の態様から、そのような事実は「審判対象画定のため必要な事項」とまでは言えないにしても、「被告人の防御にとって重要な事項」には該当するものではないかと思われ、そのような事実を、起訴状の訴因外の事実として、あるいは訴因記載の事実とは異なる態様のものとして、訴因変更しないまま認定するためには、それが争点となっていて被告人に不意打ちではなく、かつ、判決で認定される事実が訴因事実に比べ被告人に不利益でない、という事情が必要です。しかし、上記の記事にある通り、本件ではそのような事情がなかった、ということなのでしょう。
裁判員裁判では、スケジュールに追われて、従来の刑事裁判のように、結審後、問題点に気付いて再開し補充審理を行う、ということがしにくくなっている面があるように思いますが、だからといって、このような訴訟手続の法令違反は正当化されない、というのは、当然のことで、裁判官による適切なフォローが必要、ということになります。