組員からの収賄は無罪、犯人隠避など有罪

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131108-OYT1T00464.htm

被告は現金授受の事実は争わず、「授受の日時と場所は捜査段階の供述をもとにした起訴事実とは違う」と主張。野島裁判長は「監察官から『組織が納得する話をすれば(県警に勤務する)親族が不利益を被らない』と受け取られる言動があり、誘導的な取り調べがあった可能性が否定できない」とした。

検察側は授受の日時を「3〜5月」などとする訴因変更を申請したが、認められなかった。

収賄、選挙違反など、現金等の「授受」が問題になる事件では、授受時期の特定が、捜査上の大きな問題になることがよくあります。供述を慎重に吟味しつつ、様々な状況証拠、裏付け捜査結果も踏まえて、訴因で時期を特定することになりますが、特定を誤ることで、こうした無罪へとつながることもあり、その意味では、捜査側にとっては怖いものがあります。
上記の事件では、訴因変更が認められなかったとのことですが、この点は、今後、検察官が控訴すれば、訴因変更が認められるべきではないかが問題になる余地はあるでしょう。ただ、贈収賄で、数か月の幅をもった間の授受、という訴因例は、まず無く、捜査が不十分でしたと自白しているようなもので、こうした訴因変更を請求すること自体、みっともない話という気がします。訴因特定について、他の犯罪と識別できる程度の特定を要するとする「識別説」(実務上はこの考え方に立っているとされます)を前提としても、数か月もの幅をもたせることで他の授受との識別が困難になるのではないかという問題が生じる余地もありそうです。
検察官が、起訴前、警察での安易な取調べに乗っからずに、きちんと被疑者から事情を聴くことで、より真相が解明され授受時期が特定できた余地があるのではないかと感じられます。