被害者匿名の起訴状 検察が修正

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130911/k10014460971000.html

問題となっていたのは、面識のない児童にわいせつな行為をした罪に問われている被告の起訴状です。
通常、起訴状には被告に反論する権利を保障するため、被害者の名前が記載されますが、東京地方検察庁は被害者の個人情報が知られると、二次被害を受けるおそれがあるとして、起訴状には児童の名前を書かず性別と年齢だけにとどめました。
しかし、裁判所から被害者が特定できないと指摘され、対応を検討した結果、11日の裁判で児童の名前は伏せたまま、親の名前と続き柄を起訴状に追加しました。
これに対し、被告の弁護士は「本人が匿名では犯罪内容の特定が不十分だ」と主張しましたが、裁判所はこの措置を認め、裁判を進めることを決めました。

この問題については、

東京地裁、氏名明記を要求 地検拒否、裁判打ち切りも 児童わいせつ被害者匿名で起訴
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20130713#1373679282

でもコメントしましたが、訴因の特定の問題と、被告人の防御権保障の問題を分けて考える必要があるのではないかと思います。
犯罪被害者が誰か、ということは、犯罪を識別する上で本質的な要素ですから、「誰か」が特定される必要はありますが、では、氏名が明示されないと特定できないか、というと、氏名不詳の場合(例えば身元不明な人が殺害され身元が判明しなかったような場合)もあり得るわけですから、「氏名」が、そういった特定上、不可欠のものとは言えないでしょう。その意味で、親の名前と続柄で特定した、というのは、そうすることで、誰、ということは特定はされますから、1つの特定方法ではあったのではないかと思います。
ただ、そういった特定の要請が満たされても、被告人側の、反対尋問を行うなど防御権行使を十分に行うことが、情報が過度に制約されたことにより、制限されてしまうようであれば、防御権侵害という問題が生じることになります。訴訟法上は、単に、名前を書く書かないか、といったレベルで水掛け論を繰り返すのではなく、特定、防御権の両面で問題を慎重に検討すべきでしょう。