ミッドウェー海戦/ 第一部 知略と驕慢 /第二部 運命の日(新潮選書)

ミッドウェー海戦〈第1部〉知略と驕慢 (新潮選書)

ミッドウェー海戦〈第1部〉知略と驕慢 (新潮選書)

ミッドウェー海戦〈第2部〉運命の日 (新潮選書)

ミッドウェー海戦〈第2部〉運命の日 (新潮選書)

第一部と第二部に分かれ、かなりの読み応えがありますが、この分野、この海戦に興味を持っている人(私もその1人ですが)にとっては、分量が気にならない、充実した内容ですね。
ノンフィクションでありつつも、適度な物語性を加味しているため、目の前で山口司令官や加来艦長らが会話しているかのような臨場感ある描き方がされていて、賛否両論はありそうですが、私は、読んでいて、この手法は成功していると思いました。海戦に参加した将兵のプロフィールやエピソードもうまく織り込み紹介されていて、厚みが出ています。
ミッドウェー海戦の経緯や日本海軍惨敗の原因については、既に様々な分析、検討が加えられていますが、真珠湾作戦以来の連戦連勝による驕りや慢心が、日本海軍を勝機から遠ざけてしまった生々しい状況や、刻一刻と変化する戦況の中で、ミッドウェー島攻撃と米空母攻撃の狭間で果断さを欠いたことで、米航空兵力に先手を打たれ空母4隻喪失という甚大な損害を被ってしまう経緯に、読んでいて様々な教訓を読み取ることができ、この海戦が持つ歴史的意味といったことを、しみじみと感じました。
読みながら、原子力発電は安全という驕りや慢心にとらわれ、大地震の可能性や大津波による全電源喪失という危険性を指摘されつつも安全対策を怠り大事故を招いてしまった経緯と、海戦の経緯が重なって見え、歴史が悲劇的に繰り返される、ということも、改めて感じました。やはり、我々は歴史に学ぶ賢者にならなければならないでしょう。