遊客において周旋行為の介在を認識していなかったことと売春防止法6条1項の周旋罪の成否(最高裁第一小法廷平成23年8月24日決定・判例時報2128号144頁)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110826093107.pdf

原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,被告人は,いわゆる出会い系サイトを利用して遊客を募る形態の派遣売春デートクラブを経営し,男性従業員と共謀の上,女性従業員を遊客に引き合わせて売春をする女性として紹介したものであるが,出会い系サイトに書き込みをして遊客を募る際には売春をする女性自身を装い,遊客の下には直接女性従業員を差し向けるなどして,遊客に対し被告人らの存在を隠していたため,遊客においては,被告人らが介在して女性従業員を売春をする女性として紹介していた事実を認識していなかったというのである。所論は,そのような事実関係の下では,売春防止法6条1項の周旋罪は成立しないという。しかし,売春防止法6条1項の周旋罪が成立するためには,売春が行われるように周旋行為がなされれば足り,遊客において周旋行為が介在している事実を認識していることを要しないと解するのが相当である。

売春防止法で処罰の対象になっている「周旋」は、売春する者と相手方の間に立ち売春が行われるよう仲介することと解されていますから、通常は、その双方にとって、周旋者の存在は認識されている、ということでしょうね。しかし、上記のような形態で仲介行為を行えば、遊客側からは仲介者の存在が見えないままで仲介することは可能で、売春防止法がそうした仲介行為を取り締まり売春助長を防止しようとしている趣旨に照らすと、遊客から仲介者、仲介行為が見えている、認識していることは、周旋行為の要件ではない、という考え方は成り立つでしょう。その点を明確にした点で重要な判例と思いました。